雨に繋がり
落ちる無色の雨粒が冷たく傘につき刺さる
振り落とし急ぐ路は薄くぼやけて知らぬ顔
早暁の町並みは何も見えず語らず覆い被さる
水溜まりは輪の連なりを繰り返し呑み込んで
雨が叩く 肩越しに叩く
俯けば浮かび上がる あの幻影は
私の頭の両端を痛ませる
あの時少女はどしゃ降りの雨に項垂れ
泣いていたのか
笑っていたのか
ビルの屋上で両手を天に捧げ見上げたその顔を
私は見据えることが出来ない
ただ足早に歩き続けて通り過ぎようとした
信号が赤く辺りを鎮め私の足元が静止する
壊れそうな想いが押し寄せて記憶の雨が繋がった
〈大丈夫 あなたは ここまで 辿り着ける〉
私は信号の青と共に歩き出す
透明な雨粒が刹那に光る
まだ前を向けない私は傘に隠れそっと顔を上げた
自分の胸に片腕を絡ませ抱きしめる
〈大丈夫 あなたは ここまで 辿り着けた〉