流麗にして壮麗、天使で妖精
「名は体を現す」って言うけど、そんな人そうは居ないわよね。
でも、私はまさしくそのもの。
流麗にして壮麗。あら、ちょっとナルシストすぎたかしら?
とにかく、アタシって美形なのよ。
まず、顔。
神秘的なアメジストの瞳。
通った鼻筋。
セクシーな薄い唇。
鋭角な顔のライン。
少し焼けた肌はツヤツヤ。
で、ボディのほうだけど。
身長はこの間も言ったけど192センチ。
体重はヒミツ☆
腹筋はエクササイズの成果で程よくシックスパック。
足は、市販のジーンズじゃ丈が短いくらい長いのよ。自慢だけどちょっと困ってもいるの。
そんなアタシがテレビに出たらどうなると思う?
しかもオネエ言葉。
すぐに人気者になっちゃって、料理本が発売されたわ。
レシピは総ページ数の1/3で、残りはアタシの写真集みたいなもんだったけど。
「ふわぁ~」
「どうしたの、アプリコットちゃん?」
「こうやって見ると、うらら先生って本当に美形なんですねぇ」
事務所のソファでアプリコットちゃんがアタシの写真集?を見て感動している。
「実物がここに居るんだから、生を見ればいいのに」
「や、美形すぎて直視できないっていうか?」
「アタシなんてマダマダよぅ~。芸能界には美形がわんさか居るじゃない」
「どんなに顔がキレイでも、うらら先生以上に魂までキレイな人は居ないです!」
「・・・・・・・・・まったくもう」
アプリコットちゃんの困ったところは、アタシを神聖視しすぎることね。
なんだかアタシのこと、妖精とか天使だと思っている節があるのよねぇ。
精神年齢は100歳過ぎだから、人間っていうより、妖精や天使じみているのかもしれないけど、アタシは生涯俗物よ。
「ああん! この白氷の騎士ってアタシソックリだと思わない!?」
「うらら先生のほうが、性格はいいですけど、似てますよねっ」
アタシとアプリコットちゃんは、乙女ゲームで遊んでいる。ソファの前にはでっかい液晶テレビ。そこからコードが伸びていてゲーム機本体が接続されている。
今攻略しているのは、銀髪に紫目のクールな騎士様。
クーデレなところがたまらないわ。
「アタシもクーデレ目指そうかしらっ」
「うらら先生は今が一番ステキですよ」
「そお? でもクーデレ捨てがたいわぁ~。
そうだ! 今度カレのコスプレしちゃおうかしらっ?」
アタシがアタシを俗物という所以。
それは、少女マンガも乙女ゲームもコスプレもダイスキなところよ!!
ま、他にも俗物な理由は挙げられるけどね。
「うらら先生コスプレするんですか?」
「ええ。そうだわっ、アプリコットちゃんも一緒に出ましょうよぉ~」
「わ、私も!」
「このゲームに出てくる『女王陛下の侍女』なんてどうかしら? 初心者向けじゃない?」
「メ、メイドですよね?」
「アプリコットちゃんのメイド服に、アタシの騎士装束! いつものお店に注文しなくっちゃね」
「! 私に作らせてください!」
アプリコットちゃんが挙手して叫んだ。
「うらら先生の衣装なら、誰よりもっ何よりも素晴らしく作れる自信がありますっ」
彼女、裁縫もプロ級だったわね。
さて、次こそ三人目の登場人物を・・・。