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秘められた力

 陽の光を浴びて、カサカサに干からびた巨大な砂の塊。それは今にもこちら側に倒れてきているのではないかと錯覚してしまうような、とてつもなく大きい、壁なのだ。『どんな衝撃にも耐えられる』のようなレッテルを貼られてもおかしくないような壮大なスケールで作られている。そんな壁に囲まれながら、その町は国のような大きさにまで拡大していた。

 人々は賑い、町中を叫び声のような大声で盛り上がっている。そんな町の商店街を抜けて右に三十メートル進んだところに『トリア』と書かれた看板が見える。まるで今にも戦いの中に入ってしまったかのような宿屋に男は観光のチラシを持ったまま、フロントの椅子に座っていた。堂々と両足を広げ、背もたれに寄りかかり、うつろな目をしたままフロントの順番を待っているのだ。二、三分の間のうちに人はいなくなる。順番が来てもまだ、座り続ける。不審に思うフロントの人。彼が近づこうとすると男は起き上がりフロントに向かう。サインする用紙には、ブラナイトと、名前が書かれた。そう、ブラナイトはこの町に来ていたのだ。自分の故郷がどこにあるか覚えていないブラナイトには、西から来た、というたったそれだけの、本当に何の保障もないそんな情報だけを頼りに、西へ向かっていたのだった。ブラナイトはフロントにいう、

「ここの町には何か珍しいものとかないですか?」

目印になる特別なものがあれば、ブラナイトは自分の町の特徴を思い出して、故郷を見つけることができるだろう。だが、

「この町で珍しいものですか。特にないですね、あるものといえば町の賑わいですかね。」

賑わい。それはとても乏しい情報であった。そんな情報の中、ブラナイトは頭をフル回転させる。自分の故郷を探す手がかりを見つけた。

(これだけ人がいるんだ。情報屋でもあるだろう。)

「この町で一番賢い人ってわかりますか?」

「賢い人ですか・・・。あ、そういえば武器について詳しい人はいますよ。」

「武器屋だろ。それじゃ意味が・・・。」

ブラナイトの言葉を遮りフロントは言う。

「違うんですよ。武器なんて売ってません。ただ、心と武器の強さの関係を、今まで誰も考えてこなかったそんなおかしなことを調べ始めた方がいるんですよ。まぁうちに泊まりに来た時に話していたことですけどね。」

たしかに、この宿屋は静かで落ち着く。だからこそブラナイトはここを選んだのだ。その者もこの宿屋に来たということは、手がかりがあるかもしれない。

「その人が使った部屋、空いてませんか。埋まっていたならいいですけど・・・。」

フロントは奥の引き出しから名簿のようなものを取り出し、ぱらぱらとめくり、うなずく。

「うん・・・。大丈夫です、使えますよ。じゃぁ部屋番号は二〇一号室。鍵はこちらです。」

「ありがとう。」

ブラナイトはそういって鍵を受け取る。二〇一号室は二階の一番奥の部屋になる。ドアを開けるとそこには小さなベッドが一つと浴室兼トイレと思われるところに扉があり、二つの窓がついているだけの質素な部屋だった。だが、そこからの景色は素晴らしいものだった。人によってはつまらないと思うだろうが、そこから見える景色には、人影が見えず、ただ荒野の姿が映し出されているのだ。下を覗けば人が歩いているのがわかるが、それを気にすることがないようなそんな景色が、ブラナイトは好きだった。

「この部屋はいいな・・・おっと、こんなことをしている暇はないんだった。」

そう自分に言い聞かせたブラナイトはまずトイレ兼浴室に目をやった。扉を開けると普通にそれらしいものがあるだけだった。

(湿気がある・・・。ここに何かを隠しておく馬鹿はいないな。)

次はベッドの下を、ベッドを動かしてまで見てみた。ブラナイトにしてみれば全然苦にはならない。

(!)

ちょうどベッドの二つの窓に近いほうの足をよく見ると、切れ筋が入っている。よく見るとそれは外れるようになっていた。慎重にそれを外すブラナイト。中からは一枚の紙が入っていた。

『この手紙を読むものへ』

表面にはそう書いてあり、裏には何も書いてない。ブラナイトはそれを太陽にすかしてみたり目を凝らしてみたりしている。だが、文字は一向に現れない。しかたないのでそれを博士が持っていた鞄の中にしまい、眠ることで時間を潰した。

・・・ぉぃ・・・・・・おぃ・・・・おい・・・・・

夢の中で誰かが話している?寝かせてくれよ。

(おい、お前は俺に会うのは初めてだな。俺は腕輪にインストールされた人工知能だ。なんらかの原因で夢の中からしかお前にコンタクトできない。俺はお前が暴走しないようにインストールされたはずなんだ。だがお前はあの時暴走してしまった。これは何故かわからない。だが、今さらお前に何をいっても仕方がない。とりあえずお前に説明する。お前に今、外部から異常が起こされている。)

なんだと。異常だと。

(たしかに伝えたぞ。もうしばらくコンタクトできそうにない。すまん・・・。)

ハッ!

ブラナイトは目が覚めた。無意識のうちに体中を確認する。体中には心電図をとるアレがつけられていて、身動きできないようにベッドごと固定されている。

「なっ!」

まさか本当にこんなことがあるなんて。夢のやつが教えてくれたとおり、確かにいろいろなものが付けられている。腕輪に人工知能があるならばこれを異常と伝えるだろう。

目だけで周囲を見渡す、ここは寝る直前までのあの部屋だ。だが、一体誰がこんなことをしているのだろうか。人影が見える。ただ、暗くてよく見えない。夜なのか、カーテンを付けて暗くしているのか、それすらもわからない。力を解放して抜けだそうか、力を込め始めた時、

「それは止めてくれないか。」

人影の位置から声が聞こえた。枯れた声だが、聞き覚えはもちろんない。

「今それを使って抜け出すと腕が引きちぎれるぞ。」

「んだとっ!」

ガチャン。

左腕が固定されてる。その付近の関節やら何やらまで。声の主は続けた。

「とりあえずもう一度眠ってくれないか。睡眠時の心の状態がもう少しでわかったんだ。俺は怪しいものだが、お前に危害は加えるものではない。」

「お前は誰だ。」

「我はお前の探していた者。そういえばわかるか?」

男は心と武器の関係を調べている者、そういういうことになる。

「なんで、俺にこんな機械を取り付けている。」

男は口を緩めてこういって、ブラナイトに強力な睡眠薬を無理やり飲ませた。

「我はお前のその腕の武器に興味があるからね~。」

それを聞いたところでブラナイトは意識をもうろうとさせ始め、

「ぉ、俺は・・・俺だって・・・しっ知らん。」

「だから調べているんだ。これはお前の為でもあるんだよ~・・・ふふっ。」

最後にそれを聞いてブラナイトは眠りについた。

・・・おい

(おい、また夢の中でお前にコンタクト出来た。とりあえずお前の体に起きたことは異常と判断したがそれは正しかったか?)

ああ、正しかった。

(なら何故また眠った。普通は異常な時には眠らないはずとインプットされているが。)

眠らされた、睡眠薬で。

(そうか。じゃぁ時間が出来たわけだな。いいか、今からお前に俺、つまり腕輪の名前を決めてもらう。)

そんな流暢なこといってられるかよ。

(これは大切だぞ。それだけでお前に新たな能力を使えるように出来る。そういう風にインプットされたんだ。)

じゃぁ、ジョン。

(そんなありふれた名前は嫌だな。)

おい、こんな時に文句を言ってられるのか。

(まぁそうなんだが、ちゃんとした名前を考えてくれよ。次にいつコンタクト出来るかわからないんだぞ。)

まぁそうだな・・・じゃぁ・・・。

(ま、まずい・・・・まく・コンタク・が・・・・・)

ブラナイトは目が覚めた。ベッドの横には人影がある。

「目が覚めたようだね~。」

「・・・おい。お前はさっきのやつか?」

声の主は笑いながら言う。

「もちろん。お前のその腕輪について調べさせてもらった。」

「俺の認可のもとじゃねぇ。」

「怒るなって。とりあえず結果を教えてやろう。やっぱりお前のその腕輪は武器だ。様々な機能が付いていると見た。だがお前が使える能力は力の解放、血流操作程度だろう。」

声の主はどうやってそんなことを調べたのか、ブラナイトには見当もつかない。

「何故、そんなことが・・・。」

「最近の科学技術はすごいよ~。あの手紙、実は読んだ者が特殊な武器を持っている電磁波を発していたら反応して親機に知らせてくれる、っていう特殊な機械だったんだから。それくらい簡単なことになっちゃうんだよね。」

声の主は笑いながらブラナイトに付けられた装置を外していく。

「おい、外してくれるなんて親切じゃないか。」

ブラナイトが嫌みを言うように言い放つ。それに男は笑いながら。

「外してやるよ。そんで新たな技を習得してほしい。心と武器の関係を調べるものとしてはこんな体と一体化するような武器を見たのは初めてだし、気になることだらけだよ~。」

興奮しながらそういってブラナイトに付けられたすべての器具を外していく。そして最後に腕輪の部分を外す時、男は言った。

「あ、そうそう俺の名前はベリウム。ベリウム学者とでも呼んでくれよ。」

そういって笑いながら腕輪の周りについていた器具を外した。

声の主が最後の部品を外して、カーテンを開けた時、外は暗く、どんよりとした空気が窓から入ってきた。荒野独特の冷めているのか温まったのかよくわからない空気だ。時は夜。なんの変哲もない、ただの夜。そんな夜にこのベリウム学者は現われたのだ。月の光が雲の影から見えてくる。その光がベリウム学者の顔に注がれる。

「!」

ブラナイトはその顔をみて驚いた。驚かない者がいないとは思えないことだった。その声の主は黒髪を一つのピンどめをした二十代くらいの女だったのだ。途中の口調から女であることがわかりそうなものだが、あんな状況だとそんなことに頭を回すことなど出来そうにない。

「お、お前が全部やったのか。」

「もちろん、全部我が作ったわけじゃないけど、お前を拘束するまで全部。」

(こいつ・・・自分のことを『我』といいやがる。そんな奴にまともなのはいない。)

「こいつ・・・自分のことを『我』といいやがる。そんな奴にまともなのはいない・・・だと?」

「なっ!俺は何も言っていないぞ!」

なんとベリウム学者は心の声を聞いたのか、まったく同じセリフを吐いたのだ。

「我は心の声を聞くことができる。耳にお前と同じような器具を取り付けられた。」

そういって右の耳を、髪をたくしあげて見せた。そこにはブラナイトが付けられたような腕輪の耳バージョンと言うべきだろうか。そのようなものが取り付けられていた。

「これは本来、十キロメートル先の音を聞き取ることができるだけのものだった、らしいよ。数年の間これを使っていると、突然頭の中から声が聞こえてきた。そして、まず、名前を決めろとか言ってその名前が決定すると新しい使い方わかるようになる。」

「わかるようになる、だと?」

「そう、わかるようになる。頭の中に直接書きこまれるように、もう初めからわかっていたようになる。つまり我らが言語を発するように、そういう感じになる。」

ベリウム学者が言うにはこの部類の武器はそういう力を持っているというらしい。

「それは、心の声を聞くのは俺も出来るのか?」

沈黙のベリウム学者。そして月が雲に隠れた時、こういった。

「それはないと思う。この能力は最初の要求に答えた時点でわかるようになったものだから。お前もそれと同じような類の要求がくるだろう。それがお前の最初の進歩となる。」

謎の力を見せ付けられ、自分にもその力の可能性があるの示唆され、それが進歩だというベリウム学者の言葉を信じるか。

未だ見えぬ力を得られるのか、ブラナイトは当惑した。

誤ってデータを全て消してしまい、復旧をしようと試みましたができずに続きが思い出せないので、ここで打ち切ります。

申し訳ございませんでした。

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