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私の桜は、咲きますか?

作者: 逢沢 雪菜

 朝。いつも通りすぎて、逆にそれが違和感。


 高校選抜、前期試験合格発表日。


 あまりに普通すぎて。あまりに変わらなすぎて。

 その所為で緊張する。


 登校時。友達との集合時間。いつものようにいつものメンバーが集まる。家から直接高校へ向かう奴が居るから、そいつ一人が居ないけれど、それでもたまに、遅れて行く、と言って欠けている事が有る奴だったので、結局はいつもとあまり変わらない。


 登校した後も、友達との会話など、たまに合格発表に行く事に関する話題が出たりもしたけれど、結局、いつも通りに近い。


 朝学活が終わって、各自学校別に指定された教室に移動。

 願書を出しに行った時と同じメンバーで、“今日でこれからの過ごし方が変わるんだ”といったような、特別な緊張感は無い。むしろ、集まっているメンバーの大半はリラックスしているようにも見える。“諦めてる”と言い換えても過言ではないのだろうが。


 出発の時間になる。

 担当の先生が、行ってこいと声をかけた。


 バス停。バスが来る時間まで他愛もない会話をした。


 バスに乗る。いつもこの時間に一つ前のバス停からバスに乗る姉が案の定居た。


 バスに揺られて終点。要するに駅。

 ここで、電車の路線の違うメンバーとは別れる事になる。


 自分が受験した高校と同じ高校を受験したメンバーが降りる駅の一つ前の駅で、同じ路線に乗っていたメンバーの大半が降りる。それは暗に、自分が受験した高校と同じ高校を受験したメンバーが少ない事を示している。具体的に言えば、自分を含めて男子一人と女子二人の三人だ。


 駅に着いた。

 今まで感じていた緊張感が、余計に強くなった気がする。


 高校の最寄駅からは歩く。徒歩で八分くらいだ。かなり近い方だと言えるだろう。


 校門前では、予備校の人がフィルムの袋に入った冊子を配っていた。中には消しゴムが一つ入っていた。


 他の受験生の流れを追って、“合否結果票”の受け取り場所に行く。


 受検番号によって、並ぶ列が違うようだ。三つの列の内、自分の受検番号に合わせた列に並ぶ。


 だんだんと列が進むに連れて、口数も自然と減っていき、緊張感もかなり増してきた。心臓が痛いくらいに大きく速く脈を打つ。


 前に並んでいた人が終わる。自分の番になる。


 名前を告げて、封筒を受け取る。だが、まだ開けない。


 一緒に受けた三人全員が封筒を受け取って集まった。皆、中身はまだ見ていない。


 掛け声と同時に、三人一緒に中身を出す。


 一気に印刷された文字を読み流す。


 ある一単語で視線が止まる。

 息を呑んだ。言葉を失った。


 泣きそうには、不思議とならなかった。



 私は、“二つ目の封筒”を貰いに、高校校舎へと向かった。


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