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お母さんへ、あなたの子を幸福にできなくてごめんなさい

作者: ひがし
掲載日:2026/01/15

人が人を責め立てる声。

嘔吐物を啄む鴉を横目に薄い暖簾をくぐる。


「いらっしゃい」


大柄な店主に出迎えられ、カウンターの一番奥に腰掛ける。


客一人いない店内。

薄く息を吐き出した。


メニューを眺める。

ここは麺屋か。


「ええと、油麺を一つ」


「はいよっ」


大きな鍋で何やら炒め始める。


ポケットから革でできた分厚い財布を取り出し、中身を数えた。


公営放送がおやつ時を知らせる頃、目の前に大きなお椀が置かれる。


「おまち」


ふわりと、胸焼けしそうな悪い油の香りが漂ってくる。

野菜一つない、香辛料と麺だけのシンプルな料理だった。


軽く手を合わせ、勢いよく平らげた。



治安について語るニュースを聞き、何やらぼやいている店主に声をかける。


「お勘定」


代金を渡し、外に出た。

財布からカード類を取り出し、店の影に捨てる。




商業区の方へ足を進める。


屋台で一輪の花を買った。

活気のある屋台街を通り抜けると、一際大きな建物が並ぶエリアに着く。

各店舗の入口に立つ立派な人らは、すぐに自分への興味を無くすか、逆にじっと睨みつけてくる。

微かに笑い、迷いなく進んでいく。



年季の入った煉瓦の店。

目的地にたどり着くと、軽くノックをして足を踏み入れた。


あたたかな雑貨屋。

何十年も前から販売しているのだろう、よく見慣れた品物もある。


「どうも」


挨拶をするが、老婆は新聞から目を離さない。

ありがたく店内を物色する。


マグカップ、ラグ、湯たんぽにスリッパなんかもある。

彼女ならどれもきっと気に入るだろう。


ふと、天使の装飾がされた箱が目にはいる。

空けると、幼い頃に彼女がよく歌っていた曲が流れた。


手に取り、老婆に差し出す。


「今年はこれにするよ」


「仕方のない子だね」


「当日に届くように送って貰える?」


「はいはい。手元のそれも一緒に、だろう」


「ああ、そうだった」


赤いカーネーションを差し出した。



手続きを済ませ、退店する。


日は既に落ちていた。

手にはもう何もない。

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