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101回目以降のプロポーズは、どうやらループするようです。~繰り返した嘘告白と、本当の気持ち~  作者: あざね
オープニング

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1/1

プロローグ

新作です(*‘ω‘ *)





「……ねぇ、竜二?」

「なんだよ梢、そんなに改まって」



 放課後、夕陽に照らされた二人きりの教室で。

 アタシは幼馴染みの神崎竜二に向かって、おずおずと声をかけた。こんな時間を過ごせる機会も、あとどれくらい残っているだろう。保育園時代からの付き合いである少年は、茶色に染めた髪の先を弄りながら首を傾げた。

 まだまだ子供っぽい顔立ちの竜二は、ほんの少しだけ頬を膨らせている。

 アタシ――星川梢は、そんな彼に意を決したように告げるのだ。



「こんな時間が永遠に続けばいい、って思ったりしない?」

「永遠に?」

「そ。毎日のように竜二と通学路で会って、笑いあって、放課後にはたまにこうやって二人きりの時間を過ごすの」

「まぁ、悪い気はしない……けどさ」



 すると竜二は夕陽の明かりによるものか、それとも照れたことによるものか。どちらか分からないけれど、頬を赤くして視線を逸らした。

 アタシはそんな分かりやすい幼馴染みの反応に、どこか胸の奥が穏やかになるのを感じる。本当に彼と話していると、気持ちが落ち着いてくるから面白い。

 そんな時間がずっと続けばいいって思うのは、きっとアタシの本心なのだろう。

 だったら――。



「それなら、竜二……?」



 こういう提案は、どうだろう。



「アタシのこと、これからもずっと傍に置いてくれる?」

「梢、それって……」

「…………」



 それは間違いなく、勇気を振り絞ったプロポーズ。

 アタシの潤む視界の向こうにいる幼馴染みは、少し驚いたように目を見開いていた。だけどこちらの様子を確かめると、おもむろに涙を拭ってくれる。

 そして、しばしの間を置いてから答えるのだった。



「そうだ、な。オレもお前が傍にいない、ってのは――」

「ぷっ……」



 おそらくは、OKの返事。

 こうして幼馴染み同士であるアタシたちは、晴れて恋人同士になる。だけどそれを想像して、アタシは思わず吹き出してしまった。

 だって――。



「……おい?」

「あっはははっ! 竜二ってホント、騙されやすいよね!」



 考えただけでも、くすぐったかったから。

 アタシは前言を翻して笑うと、眉間に皺を寄せる彼の額をピンと指先で弾いた。



「やーい、また騙された! これで嘘告白、100回目達成!」

「……お前なぁ、またそうやって人をおちょくって!」



 すると幼馴染みも普段の調子に戻って、大袈裟に肩を竦めてみせる。

 やれやれ、といった様子だけど、先ほどまでの本気の決め顔は思い返しても吹き出してしまいそうだった。しかしそれは、さすがに悪いだろう。

 アタシはそう考えてから、軽く竜二に謝罪をした。



「ごめんごめん。さ……そろそろ、帰ろっか!」

「わーったよ、帰るぞ!」



 そして二人揃って荷物を手にし、教室を後にする。


 高校最後の一年の始まり。

 四月の暖かな風を感じながら、アタシたちはまた互いに馬鹿なことを言い合うのだった。







 アタシの名前は星川梢。

 どこにでもいる普通の女子高校生だ。強いて違いを上げるなら、幼少期から嘘告白をしてからかう幼馴染みの竜二がいる、ということくらい。周囲からは『早く付き合えばいいのに』って言われるけど、実際のところは自分でも分からなかった。


 ただ確かなのは、こんな毎日が続けばいい。

 そう、心の底から思っていること。



「……さーて、そろそろ油断してる頃合いだよね」



 それというのも、幼馴染みとのじゃれ合い、とも呼べる告白のこと。

 アタシは先日の放課後から一週間が経過したある朝に、竜二の下駄箱へ一通の手紙を忍ばせた。いわゆるラブレターというものだけど、それを手に取った彼はどんな反応を示すだろう。

 顔を真っ赤にして慌てる姿を想像しただけで、笑いが込み上げてきた。

 そして――。



「あ、きたきた……!」



 ターゲットはようやく登校してきて、自分の下駄箱の前へ。

 嘘のラブレターを手にして、目を丸くしていた。次いで顔を真っ赤にして、慌てて周囲を確認する。そんなタイミングで、アタシは――。



「じゃーん! これで、嘘告白101回達――」




 いつものように、彼の前へ。

 だけど、次の瞬間。




「――え、なに……これ?」




 視界が歪んで、暗転する。

 意識は闇の中に落ちて行くようであり、しかし感覚として正しいのは目が覚める直前に近かった。そして、



「え……?」



 鳴り響く目覚ましのアラーム。

 それを慌てて止めて、アタシは時間を確認した。



「さっきのは、夢……? でも――」



 それにしては、あまりにもリアルで。若干の寒気を覚えながら、アタシはスマホに表示された日付を確認して目を疑った。

 だって、そこにあったのは――。




「うそ、でしょ……?」




 ――間違いない。

 あの放課後、100回目の嘘告白の翌日のそれだったのだから。




 

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