6・抗う力はもうない
R15です。そこまでじゃないけど性描写ありなので注意。
目を開くと、彼の顔が目の前にあった。――触れるだけのキス。
な、なんで突然?
混乱している私の頭に彼は手を添えると、角度を変えながら啄ばむ。
そして、ぬるりとしたモノが唇に触れたと思えば、そのまま中へ侵入してきた。
「……っんん」
初めての感触に戸惑う。
……というか、なんでこんなことになってるの?!
体験したことのない激しいキス。――呼吸が上手くできない。頭がくらくらする。
それはぼぉっとするぐらい嬉しいことなのに、どうしてだか素直に喜べない。
なんで?なんで?なんで?
離れたと思えば、近づき、それは続く。
荒い呼吸を繰り返しながら、何度も、何度も。
しばらくすると、私は立っていられなくなって、彼にもたれかかった。
……もう、ルールを気にしている余裕はない。
私の手首を掴んでいた彼の手が腰にまわる。
そして、耳元で甘い囁き。
「……シたい」
その意味がわからないほど、私は子どもではなかった。
◆ ◆ ◆
ベットの軋む音が耳元で聞こえる。
熱い手が身体を這い、火照る身体。……それでも、私の頭は冷静だった。
勘違いをしてはいけない。
これは、彼が私に本気になったから、ではない。
これは、ただの罪滅ぼし、だ。
だって、彼の瞳には罪悪感が浮かんでいる。
……恋するオンナノコの観察眼をなめないでいただきたい。
蓋をしたアレは間違いではなかった。――今の彼には、本気になったヒトがいる。
だからこそ、自分のしてきたことを後悔しているのだろう。
だからこそ、私を抱くのだろう。
それは、アイでもコイでもない。ただの同情。
アソビでごめん。
ホンキになれなくてごめん。
抱いてあげるから、これでオワリにして。
そんな感じなのかな?そうなんだろうな。
……ねえ、ヤサシイヒト。
「……けいか」
私を呼ぶ貴方の声が、こんなにも心地いいなんて初めて知ったよ。
◆ ◆ ◆
ベタベタするなってルールを作っているくせに、彼はたまに私をぎゅっと抱きしめてくれた。
私は、それが大好きだった。それだけで満たされていた。
それなのに、今は。
ぎゅっと抱きしめられても、嬉しくない。満たされない。
それどころか、苦しくて、辛い。
彼の胸に顔を埋める。
"合戦"の終わりは近い。
そう思うだけで、泣きだしたくなる。
"どうして私じゃダメなの?"
泣いて縋れば、ゆうま君はこっちを向いてくれるのだろうか?