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23・終結




最初、言葉の意味が飲み込めなかったが、しばらく考えて気づいた。

……そうだ、彼女の中の俺は"噂通りの最低男"なのだ。

もしかしたら、彼女は何人もいる中の1人だとわりきっていたのかもしれない。

……俺のどこにそこまで彼女を引きつける魅力があったのかはわからないが。

こうなったら、そんなのどうでもいい。

彼女を失わないためなら、そんなちっぽけな疑問なんて気にしない。


――今までの最低な行いを告白して、俺の正直な想いをぶつけよう。


そこまでしないと、きっと彼女は俺のことを信じてはくれないだろう。

俺は蛍花から離れると、床に正座をした。



「……あの、さ」

「は、はい」

「知ってると、思うけどさ。俺って最低の男なんだ。……オンナなんて、いなくても困らない。いたら便利って程度で。適当に付き合ってきた」


蛍花が微かに眉をひそめるが、何も言わない。

……罵声を浴びせられた方がマシだと思うぐらい、その無言に俺を苦しくなった。

情けない。どうして、こうなる前に気づかなかったんだろう?

自分の馬鹿さに怒りを通り越して呆れてしまう。


「蛍花と付き合いはじめたときも……他のオンナとも……カンケイを持ってた」


そう言うと、彼女は袖で目をこすった。……本当に、俺って最低だ。

自分のことを棚に上げて、蛍花のことを疑って。……好きな子を泣かして。

胸の痛みを堪えながら、俺は続ける。


「でも、信じてほしい。……最初だけなんだ。蛍花以外、誰もいない。蛍花以外、もういらない」


自然と、声が震える。……俺って、なんでこんなに情けないんだろう。

こんなにも情けない俺が存在するなんて、初めて知った。

目の前にいる蛍花をじっと見る。


「俺、蛍花に吊りあうような男でもないし、ふさわしい男でもないけど。……それでも、蛍花のこと好きだから。愛してるから」


――だから、どうか俺の傍にいてください


俺はそう言って、深く頭を下げた。




 ◆ ◆ ◆




俺の気持ちに、応えてほしい。

そう祈っていると、突然蛍花はオロオロとした声で言った。


「え、ちょ……頭!頭あげてよ、ゆうま君!!」


まだ、頭は上げられない。

その代わりに、俺は彼女に強く懇願した。


「……答え、聞かせてください」


使い慣れない敬語が思わず出たのは、緊張からだろう。

蛍花が動いたのか、微かに音が聞こえる。


「……私でよければ、傍にいさせてください」


その言葉に、嬉し涙が零れた。




 ◆ ◆ ◆




「けいか」


愛しい彼女の名前を耳元で囁く。

すると嬉しそうな顔をして目を瞑るから、何度もそのやわらかい唇に自分のを押しあてた。

しばらくそうしていると、蛍花が俺の背中に手をまわして、ぎゅっと抱きしめる。

……なんで、蛍花はこんなにも可愛いんだろう?

負けじと俺も抱きしめかえす。


――俺を見つけてくれてありがとう。

――俺を好きになってくれてありがとう。

――俺を許してくれてありがとう。


――俺に、愛を教えてくれてありがとう。




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