21・拒絶
……どうすればいい?
どうすれば、彼女は俺の方を見てくれる?
わからなくて、自問自答。
家が近づく。
それなのに思いつかない。
イヤだ、別れたくない。
それだけが頭の中でグルグル回る。
そしてとうとう、目的地に着いてしまった。
◆ ◆ ◆
彼女の腕を掴んだまま、自分の部屋のドアを開ける。
そして、彼女がぼんやりとしている間にドアを閉めた。
そのとき、ふと鍵の存在に気付く。
――――ああ、そうだ。閉じ込めてしまえばいい。
――――そして、昨日のように愛しあって有耶無耶にしてしまおう。
そうすれば、蛍花と別れなくてすむ。
……そうだ、それがいい。
俺はためらうことなく鍵を閉める。
蛍花がその音に驚いて、振り向いた。
――――絶対に、逃がさない。
……俺は、彼女が何か言う前にその無防備な唇に噛みついた。
◆ ◆ ◆
どうにかなると思っていた。
このまま、有耶無耶になると思っていたのに。
水音を立てながら、舌を絡め取る。
そうすれば彼女も俺を求めてくれると思っていたのに。
「さ…かき、く…んっ」
蛍花は苦しそうな声で、俺の胸を叩く。
それでも、続けた。
何度も彼女の唇を貪って、舌を絡め取って、吸い上げて。
それなのに、蛍花は俺を拒むように先ほどよりも強く胸を叩く。
それがショックで、俺は思わず彼女から離れた。
拒絶するほど俺がイヤなのか?それほど、俺と別れたいのか?
蛍花はふらふらと2、3歩後ずさり、すとんと俺のベットに腰かけた。
そして、呼吸を整えようと何度も呼吸して、立ち上がろうとする。
――立ち上がらせたら、おしまいだ。
俺は、彼女の肩を掴むと強引にベットに押し付けた。
蛍花は驚きで、目を丸くする。
……力でどうにかしようなんて、自分でも最低なことをしていると思う。
それでも。
「……いやだ」
俺は、彼女と別れたくない。
◆ ◆ ◆
「榊、君?」
蛍花の戸惑った声に、視界がぼやける。
「……別れない、俺、絶対に別れないから」
「え?」
蛍花は何を言ってるの?と言わんばかりに首を傾げる。
必死に抵抗する俺とは違い、平然としている蛍花を見て、無性に悲しくなった。
ぽとり、と蛍花の頬に俺の涙が落ちる。
……俺、恰好悪ぃ。
けど、かっこつけてる場合ではない。
「この際、何番だっていい。蛍花に、別の男がいたっていいから」
本当は嫌だ。
でも、それが報いだというのなら、受け止める。
それが罰だというのなら、受け止める。
……だから。
「……お願いだから、俺の傍にいてくれよ、蛍花」
神様。
この子だけは俺から奪わないでくれ。