13・後悔
正直、オンナというイキモノは全て一緒だと思っていた。
貪欲で強欲で我儘。醜くて、浅ましい、愚かなイキモノ。
いなくても困らないイキモノ。だが、いたほうが何かと便利なイキモノ。
利用価値があるから、利用するだけだったイキモノ。
だが、その俺の認識を覆す女が現れた。
吉瀬蛍花。――現在の俺の恋人だ。
吉瀬は俺が何人目かのオンナと別れた2日後、告白してきた女だった。
いつものように「いいよ」と答えると彼女は嬉しそうに微笑む。
……最短記録を更新するかもな。
普段告白してくるオンナとは違う純粋さを感じて、俺はそう思った。
俺と付き合ううえで、ルールがいくつかある。
1・メールは返信のみ許可する。(自分から送るのは禁止)
2・俺の生活に必要以上に干渉するな。
3・必要以上にベタベタしない。(俺に触れるときは許可をとること)
女は大抵、これを提案した時点で不満を言う。
だが、吉瀬は「わかった」と言うだけ。それ以上はなにも言わない。
その表情は非常に穏やかだった。
吉瀬はルールに忠実だった。
1週間ほおっておいたが、その間一度も文句を言わなかったし、メールの返事の中にもそのことには一切触れていなかった。
ご褒美にデートをしてやろうと思ってそう送ればとても喜んでいるようだ。
今まで付き合ってきた女とは全然違うその態度に、俺は新鮮さを感じた。
デート中の吉瀬の態度も違っていた。
もの欲しそうな目で見ることもないし、ねだることもない。
それどころか、途中で寄った喫茶店の会計を俺の分まで済ませる。
これにはさすがに驚いた。
払うって言ってるのに「気にしないで」と微笑む吉瀬。
……なんでこんな女が俺と付き合いたいと思ったのか、不思議に思った。
学部が違うからと言っても、彼女は俺と同じ大学。
俺の噂はちゃんと届いているはずだ。……決して良い噂ではないそれを。
疑問が興味に変わり、興味が好意に変わる。
そんな風に、気づけばいつも彼女のことを考えるようになっていた。
こんなにも1人のことを考えるのは初めてのことで、正直俺は戸惑った。
彼女以上に美人なオンナとも、可愛いオンナとも付き合ったことがあるのに。
信じられないことに、適当に付き合い始めた彼女に惹かれている自分がいた。
……だからといって、今さらだ。
今さら態度を変えることなんてできない。
彼女へ送ろうとしたメールを消去すると、俺は携帯を閉じる。
――俺と彼女はつり合わない。
彼女の隣に相応しいのは俺みたいな"最低男"ではなく、誠実な男だ。
なるべく早く別れなければいけない。
……それがわかってるのに、別れられない。手放したくない。傍にいてほしい。
俺は、今までしてきた愚かな行為を悔やむ。
……だが、後悔しても、もう遅い。
彼女を愛する資格は、とうの昔から俺は持っていないのだ。