12・決戦の結末
しばらくの沈黙。
……え、私の勘違い?ここまできて、勘違い?
冷や汗が流れて、ごめんって謝りたくなって、自分が情けなくて、ツンと鼻が痛くなった。
ゆうま君は黙って、私から離れていく。
聞くんじゃなかった!と後悔する私。
ゆうま君は、床に正座をした。……なんで?
「……あの、さ」
「は、はい」
いつもと違う声色に、思わず身構える。
……これは、私も正座すべきなんだろうか?
そうは思ったけど、動いてはいけないような気がしてそのまま彼の言葉に耳を傾ける。
「知ってると、思うけどさ。俺って最低の男なんだ」
ゆうま君は自嘲するような薄笑いをする。
「女なんて、いなくても困らない。いたら便利って程度で。適当に付き合ってきた」
『適当に付き合ってきた』
……わかっているのに、胸が痛くなる。
悲しくて俯きそうになる。
でも、それを耐えて私はゆうま君を見つめ続けた。
「蛍花と付き合いはじめたときも……実は他の女とも……カンケイを持ってた」
そんなこと知ってるよ。
……私はそれでも、よかった。最初は。
でも、今は。――その言葉を聞くだけで、胸が痛いよ。
視界がぼやけはじめたので、袖で目を強くこする。
「でも、信じてほしい。……最初だけなんだ。蛍花以外、誰もいない。蛍花以外、もういらない」
声が震えている。
恋愛経験の少ない私には、彼の言葉が本当なのか嘘なのかよくわからない。
けど、私はその言葉に嘘があるとは思いたくなかった。
それと同時に、彼が自分の行いを露呈して、懇願するぐらいには放したくないと思ってくれていることに、安堵した。
しばらくの沈黙の後。
ゆうま君は、憂いを帯びた瞳で私を見つめた。
「俺、蛍花に吊りあうような男でもないし、ふさわしい男でもないけど。……それでも、蛍花のこと好きだから。愛してるから」
――だから、どうか俺の傍にいてください
そう言って、ゆうま君は頭を下げた。
◆ ◆ ◆
呆然と、土下座をしているゆうま君を見つめる。
……って、どうしてゆうま君が土下座してるの?!
「え、ちょ……頭!頭あげてよ、ゆうま君!!」
というか、土下座して頼まなきゃいけないのはこっちだよ!
慌てる私に、ゆうま君は頭を下げたまま言う。
「……答え、聞かせてください」
聞きなれない敬語にドキドキしながらも、私は立ちあがる。
そして、土下座をしている彼の前で、正座をした。……夢じゃ、ありませんようにと祈りながら。
「……私でよければ、傍にいさせてください」
◆ ◆ ◆
「けいか」
甘い囁き。優しい愛撫。
ああ、幸せだなと目を瞑ると降り注ぐキスの嵐。
何か、大事なことを忘れているような気がするけど、まあいいや。
彼が本当は何を考えているのか、そんなのどうでもいい。
今目の前にいる彼を、信じたい。
私は、ぎゅっと目の前にいる大好きなゆうま君を抱きしめた。




