表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/29

12・決戦の結末





しばらくの沈黙。

……え、私の勘違い?ここまできて、勘違い?

冷や汗が流れて、ごめんって謝りたくなって、自分が情けなくて、ツンと鼻が痛くなった。

ゆうま君は黙って、私から離れていく。

聞くんじゃなかった!と後悔する私。

ゆうま君は、床に正座をした。……なんで?


「……あの、さ」

「は、はい」


いつもと違う声色に、思わず身構える。

……これは、私も正座すべきなんだろうか?

そうは思ったけど、動いてはいけないような気がしてそのまま彼の言葉に耳を傾ける。


「知ってると、思うけどさ。俺って最低の男なんだ」


ゆうま君は自嘲するような薄笑いをする。


「女なんて、いなくても困らない。いたら便利って程度で。適当に付き合ってきた」


  『適当に付き合ってきた』

……わかっているのに、胸が痛くなる。

悲しくて俯きそうになる。

でも、それを耐えて私はゆうま君を見つめ続けた。


「蛍花と付き合いはじめたときも……実は他の女とも……カンケイを持ってた」


そんなこと知ってるよ。

……私はそれでも、よかった。最初は。

でも、今は。――その言葉を聞くだけで、胸が痛いよ。

視界がぼやけはじめたので、袖で目を強くこする。


「でも、信じてほしい。……最初だけなんだ。蛍花以外、誰もいない。蛍花以外、もういらない」


声が震えている。

恋愛経験の少ない私には、彼の言葉が本当なのか嘘なのかよくわからない。

けど、私はその言葉に嘘があるとは思いたくなかった。

それと同時に、彼が自分の行いを露呈して、懇願するぐらいには放したくないと思ってくれていることに、安堵した。

しばらくの沈黙の後。

ゆうま君は、憂いを帯びた瞳で私を見つめた。


「俺、蛍花に吊りあうような男でもないし、ふさわしい男でもないけど。……それでも、蛍花のこと好きだから。愛してるから」


――だから、どうか俺の傍にいてください


そう言って、ゆうま君は頭を下げた。




 ◆ ◆ ◆




呆然と、土下座をしているゆうま君を見つめる。

……って、どうしてゆうま君が土下座してるの?!


「え、ちょ……頭!頭あげてよ、ゆうま君!!」


というか、土下座して頼まなきゃいけないのはこっちだよ!

慌てる私に、ゆうま君は頭を下げたまま言う。


「……答え、聞かせてください」


聞きなれない敬語にドキドキしながらも、私は立ちあがる。

そして、土下座をしている彼の前で、正座をした。……夢じゃ、ありませんようにと祈りながら。


「……私でよければ、傍にいさせてください」




 ◆ ◆ ◆




「けいか」


甘い囁き。優しい愛撫。

ああ、幸せだなと目を瞑ると降り注ぐキスの嵐。

何か、大事なことを忘れているような気がするけど、まあいいや。

彼が本当は何を考えているのか、そんなのどうでもいい。

今目の前にいる彼を、信じたい。

私は、ぎゅっと目の前にいる大好きなゆうま君を抱きしめた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ