10・突然の先制攻撃
いつも通る道を通って、ゆうま君の家へ。
……さっきは思わず頷いてしまったけど、どうしてゆうま君の家に?
そんなに長くなるような話じゃない。
ただ、ゆうま君が私のことを本当はどう思ってるのか聞きたかっただけなのに。
どうしてわざわざゆうま君の家に行かないといけないんだろう?
彼の名前を読んでも何も答えない。
ただただ、前に進むだけ。
……彼に掴まれている腕が、痛い。
――行動の意味がわからないよ。ゆうま君。
頑張ってきた4か月。
長いと思っていた、4か月。
でも、それ以上に私とゆうま君の心の距離は長かったんだね。
そう思うと、掴まれている腕以上に胸が、痛くなった。
◆ ◆ ◆
もしかしたら、ここにくるのは今日で最後かもしれない。
昨日と同じようなことを思いながら、彼の家に入る。
当然、昨日となにも変わっていない。
それでも、空気はあの時と違う。……重くて、苦しい。
着いたら放してくれると思っていた手が、未だに私の腕を拘束する。
靴を脱ぐことでせいいっぱいで、並べる余裕はない。
どうして、手を放してくれないのだろう?
そう思っていると、彼は彼の部屋のドアを開けた。
――昨日、彼が同情して私を抱いてくれた、部屋。
昨日のことを思い出して、虚しくなる私の後ろで、鍵を閉める音。
……なんで、鍵を閉めるの?
問いかけようと思っていた口は、突然塞がれた。
――彼の、唇で。
◆ ◆ ◆
白昼夢、だろうか?
どうしてだか今、ゆうま君の顔が目の前にあって、私の唇を貪っている。
気付けば彼の舌は私の舌を絡めとっていて、水音が耳元で聞こえる。
これは、私の妄想?好きすぎて頭がおかしくなっているのだろうか?
「さ…かき、く…んっ」
彼の胸を叩く。
幸せに浸りたい、とも思ったけどそういうわけにはいかない。
それでもゆうま君は止めない。……それどころか、ますます激しくなっていく。
昨日のように、頭がくらくらして、呼吸ができなくて。
そのうえ、昨日のことを思い出して身体が火照って。
――このままじゃ、まともに話ができない
そう思って、さっきよりも強く胸を叩く。
そこでやっと、ゆうま君は離れてくれた。
ふらふらと2、3歩後ずさり、立っていられなくて思わず彼のベットに腰かけてしまう。
呼吸を整えてから、立ち上がろうとする。
それなのに、気づいたら私は彼のベットに横たわっていて。
「……いや、だ」
今にも泣きそうなゆうま君の顔が、目の前にあった。