二話 チートハウス
光が収まり目を開けると何処か見覚えのある風景が目に映る。
「ここは・・・・・・どうして実家に? 」
就職と共に離れて十年近くなるが間違いなく自らが生まれ育った実家だった。
戸惑いながらも玄関口から上がり屋内の確認を行う。
勝手知ったる我が家と言うべきか早々に各部屋の確認作業は目処がつき、現在は居間にあるソファーに腰を掛けている。
特に各部屋可笑しな所もなく昔暮らして居たままの状態だったが父や母の姿は見当たらず、また窓の外は真っ黒な暗闇が広がっており窓を開けようとしても決して開くことはなかった。日本に戻れた訳では無さそうだ。
一旦状況を整理しようと頭を働かせる。
仕事帰りに電車内で寝てしまい目を覚ましたら草原の真っ只中、スマホの画面に謎のステータスが表示され魔法を唱えたら扉が現れ開けたら光に包まれいつの間にか実家にいたと。
全く持って意味が解らない。
どうしたものかと頭を悩ませていると目の前の机の上にタブレット端末が置かれているのが目についた。
「前に帰省した時にはなかったよな、親父かお袋が買ったのかな」
二人共機械音痴だから珍しいなと思いながらタブレットを手に取りスイッチを入れる。
するとアプリが開いたままだったのか画面に何かの表示が現れる
家レベル 1
機能
電気水道無限使用可能
コマンド
外出
買取
実績
フレンドリスト
図鑑
ヘルプ
タブレットの画面には先程のステータスと似たような表示が現れていた。
表示を確認していると一つの項目に目が留まった。
「ヘルプか、これで何か解ればいいんだが」
そう呟きながら画面を恐る恐るタップをした。
すると各項目事の説明が表示される。
現れた文字を時間を掛けじっくりと読み込み
内容を確認する。
家レベルを上げる事によって各機能が開放されるとのこと。
レベルを上げるには魔物を倒したり実績を達成して経験値を取得する必要があるようだ。
「魔物か、本当に異世界に来てしまったのか」
信じたくはないが今まで起こった状況を考えれば信じざる終えない気がする。
少し気を落としながらも続けて機能の説明を確認する、家レベルの上昇に伴い様々な便利機能が開放されるとのこと。
現在は【電気水道無限使用可能】が開放されているようだ。
「水と電気使い放題ってヤバく無いか。最初からこんな機能が開放されているなんてかなりのチート能力なんじゃ」
此のままレベルを上げて機能を開放していったら凄い事に成るのではと少し心踊らせるも現状、魔物対策になる様な能力ではないと思い至り心を落ち着かせた。
続きコマンド内の内容に目を移す。
先ずは【外出】これで行き先を指定する事で指定の場所に行くことができるとのこと。
これも家レベルの上昇で行ける場所が追加されるようだ。
現在はコンビニのみ行ける様だ。
次に【買取】魔物の素材などを買い取って換金してくれるとのこと、日本円と異世界通貨どちらも選べるそうだ。
【実績】これはゲームで良くある内容で良さそうだ、一定の条件を満たすことで達成でき定められた報酬を受け取る事ができる。
【フレンドリスト】対象者の許可を取るとフレンドリストに登録でき、登録者を家に招く事ができる様になり、離れていても連絡が取れるそうだ。
最後に【図鑑】手に入れたアイテム、戦った魔物などが図鑑に登録され詳しい情報などが確認可能。
「どれもこれも相当凄い能力だな。魔物さえ倒せるなら後はこの家の中だけで暮らせそうだ」
これだけの力が有るなら、このままこの世界で暮らしても良いのではないかと一瞬過るも 両親や兄弟達の顔が思い浮かび考えを改める。
いきなり失踪なんかしたら今まで世話になった両親達に心配を掛けることになる。
そんな不義理なことする訳にはいかない、どうにかして日本に戻る手段を探さなければと気合いをいれる。
運が良いことにかなりのチート能力が自分にはあるようだ。この能力を活かしていけばこの世界でも生活出来る気がする。
この家があれば住む所には困らないだろうし、外出機能を利用すれば食事も日本の食べ物を手に入れられそうだ。
正直インドア派の自分に野宿なんて出来るとも思わないし、異世界の食事が口に合うか解らないので本当に幸運だった。
懸念点は戦う力については特別な物はなさそうなところだろうか。
【マジックボルト】攻撃魔法だとは思うが敵を一撃で簡単に倒せるような魔法ではないだろう。そうなると魔物相手にどこまで戦えるか未知数だ。
そうなると魔物と戦うのは避けたいところだ。
これらを踏まえてこれからの方針を決めるとする。
最終目標は日本への帰還、その為にはこの世界の情報を集める必要がある。
ここがよくある異世界人を呼んで魔王を退治しろなんてやっているテンプレな世界なら帰還の魔法なんかもあるかもしれない。
家レベルの機能追加にも期待して良いかも知れない。
あれだけのチートだ、日本への帰還の手段だってあってもおかしくはないだろう。
家レベルを上げていけぱ何か打開策がでてこないかと思いながらも、頭の中で考える。
当面の目標としては、魔物を避けつつ人の住んでる街を探して情報を集め、平行して家レベル上昇の為【実績】の達成を目指す。
実績を達成すれば経験値など報酬が貰えるとの事なので先ずはこなせそうな物から狙って見るかと画面を表示する。
表示されているので比較的簡単に達成出来そうなのは、
魔物を初討伐 初めて街に到達 異世界人に初遭遇 これぐらいだろうか。
「街への到達と異世界人に会うは目標を達成すれば同時に達成可能だな。魔物と戦うのは情報を集めてからにしたいが・・・・・・」
一先ずの目標が決まり緊張が取れたところで空腹感を感じると同時にお腹が鳴くのであった。