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第41話 ……! みーちゃんが堕ち――

「という事で、今からハーレム対決の祝勝パーティーを始める!」

「乱○パーティー!?」

「言ってない言ってない」

「じゃあ輪○パーティー!?」

「なんで犯罪臭上げるの? パーティーしか合ってないよ?」

「みーちゃんのパンティー!?」

「お前と会話を試みようとした俺が馬鹿だったよ。とりあえず星」

「いえっさー」

 目の前で流れるように零が亀甲縛りにされていく。


「……じゃなくて星。なんでそんな縛り方してるんだよ」

「え? 吊るすタイプの方が好きだった? それとも脱がしてからの方が良かった?」

「エロいだろうが! 見ろ! 喜んでんじゃねえかよ!」

「み、みーちゃんの目の前でこんな縛り方……やばっ、濡れてきた……」

「ずるい! 星ちゃん! 私も!」

「ほい来た」

「やらんでいい! 新も脱ごうとするな!」


 部屋の中に亀甲縛りの美少女ⅹ2(片方は全裸)とかどんな状況だよ。いや本当に。


 改めて、俺は一つ咳払いをした。


「それではもう一度。これから祝勝会を始める!」

 俺がそう言えば、いえーいと皆がノリよく返してくれた。


「まず最初に。先に話していたご褒美の方を渡したいと思う。まずは彩夏」

「……! はい!」


 彩夏を呼び、俺は小さめの箱を取った。


「その……なんだ。とても良い歌だった。カラオケの時もそうだったが、やっぱり俺は【nectar】でも彩夏推しなんだって分かったよ。だから、これはファンとして……そして、彩夏の友人としてのプレゼントだ」

「ありがとうございます……! 友人より上の関係になれるよう頑張っていきますね!」


 ……遠回しにそういう関係では無いと伝えたつもりなのだが。


 やはり、彩夏は強い。


「ふふん、みーちゃん。今更そんなので私達が諦めると思う?」

「……思わないな。悪い、彩夏。意地悪な言い方をした」

「大丈夫ですよ。……それより、開けてみても良いですか?」

「ああ、もちろんだ」


 彩夏は本当に俺の言葉は気にしていないらしい。それに救われながら……どこかわくわくとしている彩夏へ頷いた。


 彩夏が丁寧に包装を外していく。そうして中身が見えてくると……彩夏の顔が輝いた。


「……この前番組に出ていた時に言ってた事を覚えていたんだよ」


 それは……ミサンガであった。二つ、箱に納められている。



 片方は自作の物。……しかし、初めて作った物だから見栄えがそこまで良いわけではない。


 それと……一応、全員同じくらいの予算にしようと考えていた。だから、もう一つは某ネットショッピングサイトで買ったものだ。


 自分で作ったものは、【nectar】のイメージカラーである赤と緑。そして、オレンジを組み合わせたもの。

 買った方は、ミサンガ……というよりはアンクレットに近い物だ。色は彩夏のイメージカラーであるオレンジである。


「未来さん」


 名前を呼ばれた次の瞬間。







 体が柔らかいものに包まれおっぱ……やめ、やめろ。そういう雰囲気では無いだろうが。


「ボク、今まで色んなファンの方からプレゼントは頂いていました。本当なら気持ちに差をつけるべきでは無いのかもしれませんが……」


 そのまま彩夏が上を……俺を見てきた。


「ボク……今まで貰ったプレゼントで、一番嬉しいです! すっっごく嬉しいです!」

「ッ……」


 やべえ。俺の推しが可愛い。



 というか待て。なんで俺は推しに抱きしめられてるんだ? 推しだぞ? 本来関わってはいけない存在だぞ?


「未来さん」

「……な、なんだ?」

「ボク……この中だと一番未来さんとの付き合いは短いですけど。み、未来さんの事が好きな気持ちは負けません!」


 ……やばい。上手く呼吸が出来ない。絶対今俺やばい顔している。やばい。やばい(語彙力の消失)


「大好きです……未来さん!」


 あ、これやばい。


「……! みーちゃんが堕ち――」

















「ない!」


 物理的にも精神的にも堕ちかけそうだったが。どうにか意識を取り戻した。


 危ねぇ。まじで。いやまじで。俺が長男じゃなければ耐えられなかった。


「堕ちても堕ちなくても良いんです。……まだまだ時間はいっぱいありますから。ボクはただ、好きって気持ちが溢れちゃっただけです」



 ア、スキ……じゃなくて。


「でも……まだまだ溢れちゃいそうです」


 そう言って彩夏が微笑んだ。ア、カワイイ……じゃなくて。


 やばいな。とりあえず深呼吸をして落ち着こう。吸って――


「えいっ」


 頬に……頬だ。誰がなんと言おうと頬だ。唇の端にギリギリ当たったような気がしなくも無いが。頬だ。


 そこに……柔らかい感触があった。吸った息の吐き場所を見失ってしまう。


「えへへ……少し狙いがずれちゃいました」

「零ちゃん! 今の判定は!?」

「ん。ファーストキスのフまでは来てたけどギリギリセーフ」

「むむむ……彩夏ちゃんの策士! 私もお兄ちゃんとイチャラブべろちゅー性活一ヶ月耐久したい!」

「オプションが多い上にどれもハードルが高ぇ」

「じゃあ一ヶ月耐久イチャラブックスべろちゅー付きで良いから!」

「言葉入れ替えただけで何も変わってないよ?」

「お兄ちゃんの意地悪! でも好き! 貢いじゃう!」

「お兄ちゃんさ。新が将来悪い男に騙されないか心配なんだけど」

「大丈夫だよ! 私は永遠にお兄ちゃんを愛してるから! お兄ちゃんにしか騙されないよ!」

「ブラコンが」

「えへへ……」

「褒めてねえ!」


 ……と、その時。胸がとんとんと叩かれた。見れば、彩夏が人差し指でつんつんつついてア゛ッ……


「なんだ?」

「この男。澄ました顔をしているが心の内では彩夏ちゃんが可愛すぎて気絶しているのである」

「的確に俺の心を読んでナレーションするのやめてくれない?」


 それはさておき、俺は彩夏を見た。


 顔良ッッッッ。


「あの……未来さんが良ければ。ミサンガを付けて欲しいんです……」

「ん? ああ。良いぞ」

「ありがとうございます! それじゃあ……アンクレットは左足でお願いします……こっちは外せる結び方でお願いしても良いですか?」

「ああ。分かった」


 彩夏が俺から離れ、アンクレットの方を渡してきた。俺はそれを受け取り……彩夏を座らせた。


 そして、俺もしゃがみ……彩夏の足に付けようとした瞬間、俺は気づいてしまった。



 今現在、彩夏はスカートを履いている。純白のスカートだ。……そして、足首に付けるために少し膝を曲げてもらっている。



 そこから導き出される答えは……


 Man's dream男の夢。すなわち……



 やめろ! 推しを妄想の中で汚すな!



 とにかく、瞼を限界まで閉じろ。足首以外を視界に入れるな。


「あ、あの……未来さん。ぼ、ボク、今日は見られても大丈夫なようにしているので……大丈夫ですよ」


 その言葉にホッとする。ああ、そうだよな。アイドルだもんな。スパッツや短いズボンぐらいなら履いてるか。


 俺は安心して瞼を開いた。すると――



 その真っ白で細い脚の伸びる先には。装飾の凝った、真っ白で……少し透けた下着が目に入った。



「ど、どうですか……? 可愛いですか……?」



 ……見られても大丈夫って勝負下着そっちかよ!?




 やばい。何がやばいって。


「みーちゃんのみーちゃんがやばい」

「やめて! 言葉にしないで!」


 今の一瞬で完全に戦闘態勢になってしまった。


「す、すご……ズボン越しからでも存在感が……これが27.3cm」

「具体的な数字出さないで!」

 星にそう返しながらも、俺はどうにかアンクレットを結ぶ。


「こ、これで大丈夫か? 痛かったりキツかったりしないか?」

「は、はい……あの。未来さん」


 顔を背けようとしたら。彩夏に手で止められた。


「ぼ、ボクも頑張って勇気を出したんです。か、感想とかちゃんと欲しいなあって」


 目を逸らそうにも、彩夏がしっかりと掴んでいて動かせない。というか俺の中の男の子が暴走して逸らせない。


「そ、そうだな。……エロい……じゃなくて! その、なんだ。彩夏の清楚なイメージである白と、相反する透けが交わってめちゃくちゃエロ……じゃなくて、可愛いと思うぞ」

「未来君の中のオタクの語彙と男の子としての語彙が組み合わさって普段じゃ絶対言わない事言ってる……」


 そこでやっと彩夏が手を離して……くれない!?


「そ、その、彩夏?」

「……み、未来さんなら! いい、ですよ? ず、ずっと見ていても……」

「本格的に堕ちるからやめて! 物語が終わっちゃう! 彩夏endで終わっちゃうから! まだ三章始まって最初の話だよ!」

「み、未来君? 何言ってんの?」

「何って……俺何言ったの? 記憶が飛んでるんだけど」


 え、何これ怖っ。


 そうしてやっと、俺は彩夏から開放された。いやもう。眼福でし……こほん。


「それはそれとして新。黙っていると思ってたら何やってんだ?」

「お兄ちゃんのお兄ちゃんの観察絵日記! 今年の自由研究の課題にするんだ!」

「やめなさい。学校でブラコンって言われる事になるぞ」

「え? もうなってるけど?」

「ああ、もう手遅れだったか」


 新からスケッチブックと鉛筆を取り上げる。



「ああ、あとちょっとで完成だったのに!」

「こんなの描かせるわけ……って絵上手っ!? お前なんでこんな所だけ振り切れてんの!? あとズボンとパンツはどこいった!? それとこのクオリティだとモザイクかけるか黒海苔貼っつけないとおこられるよ!?」

「透視能力だよ、お兄ちゃん」

「そんな当たり前のように超能力を使うな。零かよ」

「そんな零ちゃんが当たり前のように超能力を使うみたいな……」


 星の言葉を聞き流しながら、俺は立ち上が……れねえな。


「それと彩夏。ミサンガも付けるのか?」

「あ、じゃあ……ボクの右腕でお願いします。……絶対外れないような結び方で」

「……ライブの時なんかも外せなくなるが。良いのか?」

「はい! ……テレビに出る時とか、人前に出る時はアンクレットも、両方付けていきますから」


 ……また嬉しい事を言ってくれる。



 それにしても、アンクレットとミサンガ……何か、付ける場所でも意味があった気がする。


 ミサンガは利き腕がどうの……とかだったか? 確か、彩夏は右利きだったはずだ。後で覚えていたら調べておこう。



 そうして……俺は彩夏の手首にミサンガを巻き付けた。


「私もみーちゃんに縛られたい!」

「縛らないよ? てか亀甲縛りにされたまま言わないでくれる?」


 零は未だに縛られたまま寝転がされている。どうしてやろうか。渡す時に解こうかと思ったが。このまま放置しても……



 いや、喜ぶだけだな。


「あ、ありがとうございます! 未来さん!」

「ああ。どういたしまして。次は星の番だぞ」


 時間を取りすぎた。テンポよく渡していこうと、俺は次の箱を手に取ったのだった。

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