第37話 みーちゃんは元々耳が感じやすかったのでノリと勢いで開発しました
私はもちろん、彩夏ちゃんも困惑していた。
「えっ……と。これは……その…………未来さんがそう答えるって事ですよね?」
「そうだよ? だって、これはみーちゃんの答えを書く所だよ」
「いや、本当にそれはそうなんですけどね。いつもはそれに加えて本当の事……というか、零ちゃんの見解が述べられていたので」
彩夏ちゃんの言葉に……零ちゃんがイタズラっぽく笑った。
「そんなに知りたい?」
「……!」
「ふふ。彩夏ちゃんのえっち」
「零ちゃんが言うんだ……」
彩夏ちゃんもあんな肌の上からスケベを羽織った人物に言われたくないだろう。
……というか。なんで新ちゃんまで書いてないんだろう。実はあの二人は姉妹なんじゃないかってぐらい以心伝心なんだけど。
「え、えっと。彩夏ちゃん。答え合わせにいっても?」
「は、はい! ……もう。零ちゃんの意地悪」
彩夏ちゃんが頬を膨らませている。……珍しい表情で、ギャラリーがおおっと沸いた。
「思ったんだけど。あの二人のスキャンダルとかバレたらやばくないの?」
「ああ、それは大丈夫。アンタ達は会わなかったはずだけど、入り口のところで連絡先とか書かないといけなくなっててさ。その時にここであった事は口外しないようにって誓約書にサインさせられるんだ。破れば法的措置を取る、って書いてあってさ。それに、【ヤンデレーズ】と【nectar】の事務所も協力してくれてるらしいよ」
「……だからあんなセットも作れたんだ」
「そういうこと。あ、口外しないでね。建前はヒュウっちのお父さんがやったことにしてるから」
……そっか。そうだよね。さすがにアイドル事務所が恋愛OKです! とか言えるはず無いもんね。
色々と分かってきた。
「……それより良いの? もうそっちの答え合わせだけど」
「あ、ありがと」
見れば、向こうの答え合わせは終わっていた。向こうの机のモニターに書かれている数字が10になっていた事から分かった。
「えっと……それじゃあ未来さんのお……の大きさを教えてください」
彩夏ちゃんの言葉に未来君は困ったような顔をした。
「そうは言ってもな……分からない……ってのが答えだ。……まあ、どちらにしても。どうせ零が答えてるだろ。な? 零」
「ふふ。どうしよっかなー。みーちゃんにおしえよっかなー?」
……零ちゃん? どういう事?
「良いから教えろ。俺だけ知らないとか滑稽すぎるだろ」
「しょうがないなあ、みーちゃんは」
零ちゃんはにやりと笑った。
「27.3cm」
その言葉に……会場が静まりかえる。
うわあ……大きさを改めて知ったらまたなんか……えっちに思える。
でも、なんで零ちゃんは今になって……? なんで書かなかったの……?
その時、私は気づいてしまった。
「まさか……」
「ほらもう、今度は何を書いたんだ? 早く見せてくれ」
向こうにスクリーンが映った。
『分からない』と書かれた、答えが。
「なっ……」
「あーあ……私、みーちゃんに大勢の前でみーちゃんのおち○ちんの大きさを公言しろって言われた……声まで犯されちゃったね。声帯姦だよ」
「……ハメやがったな!?」
「ハメられたの!? どこの馬に!? それより声帯姦と性感帯って響きが似てるよね。お兄ちゃん。どっちもえっちだし」
「やかましい。ツッコミが追いつかん」
零ちゃん達がやった事は一見意味が分からない事に思えたけど。
未来君とこんな風に未来君をからかいたかったから『分からない』って書いたんだ。
私達はただ、零ちゃんが未来君とイチャイチャするために書かれた答えに翻弄されていた。
「ふふ」
思わず笑ってしまった。
一体どれだけ未来君の事が好きなんだ、零ちゃんは。こんな所でもイチャつきたいのか。
まあ、それはそれとして。要らない事に頭を使ってしまった。数学でわざわざ難しい解き方をしてしまった時のような苛立ちがある。
あの二人は後で一発は小突こう。絶対に。
「ちなみに勃ってない時でも18cmはあるよね、お兄ちゃん」
「知らねえよ!? てかなんでお前が知ってんの!?」
「えっ……なんでって。測ったから」
「そういう意味じゃねえ!」
未来君の言葉に会場がザワついている。主に男の人が。
そんなに凄い事なのだろうか。
「ね、冬華ちゃん。私よく分かってないんだけど、未来君のって凄いよね」
「……皮肉?」
「あ、違う違う。単純に疑問に思って」
苦々しい顔をする冬華ちゃんに首を振ると……ため息を吐きながらも教えてくれた。
「はぁ……日本人の平均が大体13cmとかって言われてるわよ。確か……世界で一番そういう平均が大きいところでも17とか……18はいってなかったはず。そう考えればどれだけ規格外か分かる? 通常時で普通の人のその……おっきい時よりもおっきいのよ」
おお……
「……よく知ってるね、冬華ちゃん」
「友達に教えられたんだよ。下ネタ好きなのが一人居てね」
なるほど……とにかく、未来君は男の子として強いらしい。
「ちなみに竿の直径はだいたい6.5cmぐらいで、カ「やめよ! この話! なんでそんな詳しいのか聞かないでおくから!」」
「えー? お兄ちゃん、知りたくないの? 半勃ちのサイズも測ったんだよ? ちなみに今朝測った最新版だからね」
「知りたいか知りたくないかで言えば知りたいよ? でもお前らから聞くってだけで精神がゴリッゴリに削れるんだわ」
「私はお兄ちゃんにゴリッ♡ゴリッ♡って犯されたい!」
「聞いてねえ。てかお前ら羞恥心とか無いの? めちゃくちゃ見られてるし聞かれてるんだよ?」
「ふふ……皆に私達の恥ずかしい所……見られちゃってるね」
「ははっ。生き恥ってこういう事なんだな」
「え!? お兄ちゃんイクのが恥ずかしいの!?」
「もう黙ってろお前ら」
「……未来君のメンタルってやっぱり大概な気がする」
普通あんなに冷静にツッコめるだろうか。いや、無理でしょ。
「あ、アンタ達って……大変なんだね」
「まあ……大変か大変じゃないかで言えば地獄の灰汁を煮詰めた場所みたいな感じだけど」
「どっちかで答えられないの?」
「あれ見れば分かるでしょ……」
「ちなみにみーちゃんの一年毎のサイズ表とかもまとめてるよ。みーちゃんが五歳の頃からだけど」
「性の目覚め早くない? てか捨てろ。燃やせ。シュレッダーにかけろ」
「ちなみに原本がこちらになります」
「なんで持ってきてんの!? 頭おかしいの!?」
「あ、零ちゃん! 見たい!」
「こっちからそっちの様子見れないんだよ! 絶対見せんなよ!」
「大丈夫大丈夫」
「大丈夫じゃねえから。何も」
「あ、彩夏ちゃんと星ちゃんも後で見せてあげるね。中学一年からの伸び凄いよ」
「やめろ!!!」
「……ね?」
「ああ、うん……」
冬華ちゃんが微妙な顔をして頷いた。
……それと、あのノートは後で見せてもらおう。私が会った時の未来君……どんな感じだったんだろ。
「え、えっと……次行って良いですかね?」
「ああ、悪い。どんどん行って終わらせてくれ。一刻でも早く」
少し困った顔をして彩夏ちゃんが言えば、未来君が謝った。
「そ、それでは次行きます!」
スクリーンが切り替わった。よし。とりあえず私も落ち着こう。
「それじゃ、次いきます。…………飛輝君と未来さんの性感帯をお答えください……」
「またこんなの!?」
思わず口にしてしまった。いやもう。おかしくなってない!?
「誰かのイタズラなの? 後であぶり出しておかないと」
「まあ……今更変えるのも時間かかっちゃうよね」
あの三人が時間を無駄に使ってイチャイチャしてるのも時間不足の原因だけど。
でもまあ……未来君のなら知っておいても損はなさそうだし。
二人も何やら書き込んでいる。先程のような事も無さそうだ。
そして、四人が書き終わる。
「百花ちゃんチームの回答です! どん!」
『首筋、脇、耳』
相変わらず二人とも同じ答えだ。……零ちゃん達が異常を通り越して頭がおかしいだけで、相手もなかなか凄いと思う。五問全て正解しているんだし。
「……今更だけどこれ、未来君達二人からしても地獄なんじゃ」
「もうだいぶ後の祭りっしょ。てかそっちの方がヤバすぎてこっち目立ってないし……おかしいんだよ。こっちは百花ちゃんと早希ちゃんが一番キャラ濃いはずなのに」
「なんかごめん」
零ちゃん達のキャラが濃すぎる。あと未来君もツッコむから悪い。
「それでは次に、零ちゃんチームの回答ですよ!」
『耳、太もも、お腹。現在私がみーちゃんの指、乳首、くるぶしをこっそり開発中。将来は全身性感帯にする。強めの風でイッちゃうくらいにする』
『耳、太もも、お腹。今はお兄ちゃんのひじ、鎖骨、肩甲骨を開発中。将来は感度6000倍にしたい』
「部位がニッチすぎない? え、くるぶし? 肩甲骨?」
しかも全身性感帯って。未来君町出歩けなくなるじゃん。
……あの二人なら未来君を家に閉じ込めて代わりに働いたり買い物したりしそうだけど。
「耳に太ももにお腹ですか……覚えておきますね」
「彩夏ちゃんまでテンションおかしくなってるし……」
でも私も今度こっそりお腹舐めてみよう。
「そ、それでは! 解答に移ります!」
スクリーンに二人が映る。ずっと座ってて体が固くなっていたのだろう。二人ともストレッチをしていた。
「ストレッチ中のところごめんね、飛輝君。飛輝君の性感帯を教えてくれるかな」
「性感帯!? ……また凄い問題を出してきたな。……首筋と脇、それに耳だな」
「正解です!」
……本当にお互い様譲らない。いや、零ちゃん達はずっとイチャイチャしてるだけなんだけど。
「それでは未来さん! せ、性感帯を教えてください!」
「……耳と太もも、それにお腹だな」
「正解です!」
相変わらずこちらも正解だ。
「ちなみにみーちゃんは元々耳が感じやすかったのでノリと勢いで開発しました」
「ノリと勢いで開発された俺の身にもなれ」
「ふふ。ちっちゃい時は耳ぺろぺろされて女の子みたいな声上げてたもんね」
「あの時のお兄ちゃん可愛かった! 今でも寝てる時に耳ふーってしたらえっちな声上げるもんね!」
「俺が寝てる間に何してんの?」
「話が進まないので回答も見せておきますね」
「ああ。わる――おい、二人とも。これは何のつもりだ?」
「みーちゃんって唯一無二の個性欲しいって言ってたじゃない?」
「ああ、そうだな。でも唯一無二の性感帯が欲しいとは言ってねえぞ」
「ふふ。私ってみーちゃんの心読むの得意だから。分かるんだよ」
「今この瞬間から得意と言えなくなったなおい。それと新。最後のはなんだ?」
「感度3000倍じゃ生温いかなって……」
「死ぬよ? 日差しで目やられるし小指をタンスの角にぶつけてショック死するよ?」
「大丈夫。エロゲ特有の不可思議パワーでなんとかなるよ」
「ここは現実なんだよ」
「本当に現実……なのかな」
「漫画の序盤に転校してくる不思議キャラが主人公とすれ違いながら吐くセリフをここで言うんじゃねえ」
「一回言ってみたかったからつい……」
「お前が言うとガチにしか聞こえねえんだよ」
「話は戻すけどお兄ちゃん。感度6000倍にするためにはやっぱり今からでも性感帯の開発をする必要があると思うんだ」
「話を戻さんでいい。早く問題に戻ってくれ」
未来君がそう言って……やっとスクリーンが切り替わった。
時間が押してるならば、この三人の会話をブツ切りにしてでも進めれば良いはず。でも、そうしないのはギャラリーが楽しんでるからだ。多分。
そうして……クイズは進んでいく。
「第七問。せ、性癖を教えてくだ……さい」
『みーちゃんは匂いフェチ。特にお風呂上がりに抱きついた時とか結構な確率でおっきくなる。それとおっぱいの匂いにも弱い。というか本人は認めたくないみたいだけどおっぱいフェチでもある。今は周りにおっきい子しか居ないからおっきいのが好きだけど、多分みーちゃんの事だからちっちゃいのも好きになる』
『お兄ちゃんは匂いフェチ。シャンプーとかボディソープとか変えたらすぐに気づく。今まではそれとなくお兄ちゃんに抱きつきながら擦ってもあんまり反応は良くなかったけど、最近だと効果がある。あとお兄ちゃんはおっぱいが好き。すぐえっちな漫画の受けみたいな事になる』
「どうしてお前らは余計な情報を付け足すの? 俺をいじめたいの?」
「だって……みーちゃんの事好きだし」
「好きな子にイタズラする小学生男子かよ」
「お兄ちゃんにイタズラして良いの!? 何人まで孕ませていい!?」
……とか。
「は、八問目です。す、好きな体位は?」
『正常位。ちなみにその次に好きなのが対面座位。みーちゃんの持ってるえっちな本の九割はそれ』
『正常位。もっというとらぶらぶえっち。女の子が可哀想な目に遭うのは無かったし、NTRとかも無かった。あ、でも他だとバリエーションは豊富で幼馴染から妹、ギャルとかアイドルとこっそりなんてのもあったりした』
「殺せ……俺がこれ以上恥を晒す前に……」
「ダメだよ。人間としての責務は果たさないと。子供百人作って玄孫を拝むまでは死んじゃダメだよ? 死なせないけど」
「うん。お兄ちゃんは多分四百とかまで生きるよ」
「それはもう逆に死なせてくれないかな? それ、俺多分乾ききってるんだよ。肉体も心も」
など未来君のプライバシーが無くなっていた。今更か。今更だね。
そして――九問目。
「それでは九問目です」
彩夏ちゃんが一瞬目を丸くするのが見えた。
「未来君と飛輝さんの初恋の人をお答えください」




