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第29話 これより! 第一回、ハーレム対決を始めるっっ!

「……ついに本番の日か」


 日は五月四日。今日の十時、町の運営する体育館を貸し切って、ハーレム対決が行われる。



 ……いや、なんで貸しきれたんだよと思うかもしれない。てか俺も思った。

 なんか、飛輝の親が町のお偉いさんとか。すげえな。息子のハーレム認めてんのかよ。あっちの父さん。


「ここまで長かったね……星ちゃんが料理の練習してる最中にみーちゃんが襲いかかって料理が台無しになったり、彩夏ちゃんが手〇ンカラオケをして三十点を取ったり。私とあーちゃんがみーちゃんにえっちなことされながらクイズに全問正解したりしてさ」

「存在しない記憶やめな? 俺が性欲魔人みたいじゃねえかよ」

「大丈夫。確かにあった記憶だから」

「タイムリープ系の主人公が言う台詞じゃねえかよ。んなくだらない事をタイムリープしながらやってんじゃねえ」

「えへへ。五人でローション相撲してみーちゃんが転んで記憶を失った時は大変だったよね。みーちゃんに『実は全員がみーちゃんのお嫁さんで妹も結婚出来る社会になったんだよ』って言ったらみーちゃん信じちゃって。その後お義母さんが変わり果てたみーちゃん見て倒れたんだったよね」

「多い多い。情報量がぶん殴ってきた。俺が機械なら煙吹いて倒れちゃうよ」

「ふふ。吹くなら煙じゃなくて潮の方が良いもんね」

「そろそろ本当に怒られるんじゃないかって思って数日経ったんだ。運営大丈夫? こんな作品放置して」

「どこまでいけるか限界チャレンジ……する?」

「やらねえよ」

 そんなやり取りをしながら……俺はため息を吐いた。


「というか零。まずは服を着ろ。ド変態が」

「世の中には全裸で生きる部族も居るんだよ? 差別だよ!」

「ここは日本という国なんだよ。そして日本の中には裸族は居ない。知ってる?」

「家の中では裸族の人は居るんだよ」

「人の家の中で裸族になる奴は居ねえよ」

「居るよ。ここに」

「やかましいわ」

「えいっ」

「ぐもっ」

「今だ!あーちゃん! 星ちゃん! 彩夏ちゃん!」

「「「はい!」」」

「!?」


 目の前が零の乳で埋め尽くされたかと思えば。部屋に三人が入ってきた。




 ……全裸で


「ふんも!?(何してんの!?)」

「今日が本番だからみんなみーちゃん成分補給したいって」

「ふんな……(だからって全裸になる必要は……あっ)」


 両腕が。そして下腹部に柔らかくて暖かい感触がおっぱい。


「ふぁー!(新! その位置はやめろ! 色々と良くない!)」

「え? なにいってるのかわからないよーおにいちゃーん」

「ぐ!(嘘つけ!)」


 そうしていると……両手が柔らかいものに当たっておっぱい。


「零ちゃんと新ちゃんばっかりずるいよ。私のも触ってよ」

「……そ、そうです! ぼ、ボクもずるいなって思ってたんですよ!」


 はは。これ普通のラノベなら夢オチなんだろうな。夢であれ。夢で。


「あ、みーちゃんが現実逃避し始めた。二人とも、みーちゃん耳弱いからやっちゃって」

「!?」

「分かった」

「わ、分かりました」



 次の瞬間……俺に両耳に吐息が当たっ……


「み、未来君。こういうのが好きなの?」

「え、えっと……確か沙良ちゃんが言うには……」


 吐息混じりの囁き声。正直それだけでも色々やばいのだが。


「未来君って……変態だよね」

「未来さん……大好きですよ」



 アッ……




 割愛




 やばかった。同級生と推しの囁きASMR(生)やばかった。

 まじで。いやもう。細糸一本でどうにか耐えてた。


「むぅ……お兄ちゃんの後ちょっとだったのに。ピクピクしてたのに」

「お、男の子としての尊厳が全て奪われる所だった。あぶねえ。俺の理性偉いぞ」

「……今までで一番の手応え。これからはみんなで攻めよう」

「やめて! 俺本当に死んじゃう! あと服着て! お願いだから!」


 一段落付いたように見えるが。今も俺は絶賛全裸の四人に抱きつかれているのである。




 ……あれ。最近読んだラノベみたいなテンプレだとこの後――


「未来? あんた十時から用事があるんじゃ……あっ。お邪魔だったみたいね」

「そうなるよな! テンプレだとそうなるもんな!」


 母さんが一瞬だけ部屋に入ってきて出て行った。俺はもう知らんぞ。


「ふふふ……みーちゃんのハーレム性活への一歩目だ」

「何恐ろしい事言ってるの? 君」

「あちゃー。見られちゃったね、未来君。……ちゃんと責任取ってよ?」

「ぼ、ボクも……か、勘違いされた責任を取ってください!」

「あ、じゃあ私も!」

「何恐ろしい事言ってるの!? 君達!? あと新! そんなみんなやってるから私も! みたいなノリで責任を問うてくるんじゃねえ!」


 思わずそう叫んだ。……そして。母さんに言われた事を思い出した。


「……待て。今何時だ?」

「え? 九時半だよ?」

「ギリギリじゃねえか! お前ら服着ろ! それで外で待ってろ!」




 ……と。それでやっと、全員外に出たのだった。


 ◆◆◆


 呼ばれた場所は町の運営する体育館。中へ入れば……大勢のギャラリーが居て、舞台の上に彼は居た。


「遅かったじゃないか。怖気付いてもう来ないのかと思ったよ」

「うわぁ……ハーレム主人公の敵キャラかよ」

 ちゃんと連絡しただろうが。襲われてて遅れるって。

「みーちゃんみーちゃん。心の声と逆になってる」

「え? まじ? そんな漫画みたいなことある?」


 零へとそう返しながらも、俺は改めて飛輝を見た。


 よく分からん玉座っぽい椅子に座って美少女を侍らせている。うん。三下エロ魔王って感じだ。


「そういえばキャラ変わった?」

「う、うるさい! 別にそっちのキャラが濃すぎてこっちも新しくキャラ付けしようとかそんな事考えてた訳じゃないからな!」

「そうだよ! きーちゃんが毎夜通販で『これじゃない……これだとキャラが弱い』とかぶつぶつ呟きながら買った商品じゃ無いからね! この椅子は!」

「丁寧な説明ありがとう。でも無理してキャラ作る必要は無いんだぞ?」

「うるさい! まずはルール説明からやるぞ!」


 飛輝がパチン、と指を鳴らした。すると、上から幕が下りてくる。


「違う違う! そっちじゃない!」

 ……幕が上がる。そして、スクリーンが下りてきた。


「うわぁ……。あれ絶対夜寝る前に思い出して恥ずかしくなって死にたくなるやつじゃん」

「きーちゃんメンタル弱いんだからそんな事言わないで! あんなにリハーサルしたのにミスってて今きーちゃんのメンタルボロボロなんだから!」

「う゛っ゛」

「トドメ刺してんぞ。というか結構楽しみにしてたんだな……」


 飛輝がぷるぷるしている。……しかし、数秒ほどして飛輝は口を開いた。


「と、とにかく。今からルール説明を始める。照明!」


 飛輝の言葉と共に照明が暗くなった。それと同時に……舞台上のスクリーンに映像が映った。


「これより! 第一回、ハーレム対決を始めるっっ!」


 と、飛輝が宣言すれば……わあっと観客が沸いた。


「え? 二回目もあるの? てかそんな盛り上がるもんなの?」

「二回目があったら人数増えてるかもね」

「やめて。ちょっとありそうだから」

「未来君……でもありそうだね。ほんとに」

「ぼ、ボクも負けないようアピールしないと」

「何人増えてもお兄ちゃんの寝顔を堪能できるのは私だけだから」

「はは。帰ろうかな」


 とか言いながらも、もう帰れない事は分かっている。


「それではこれからルール説明を始める。……とは言っても、難しい事は無い。三本勝負で、先に二勝した方の勝ちだ」


 マイクを片手に飛輝が言うと……画面が切り替わった。


「まずは一試合目! カラオケ対決だ!」

「「「うおおおおおお!」」」


 画面に二人の美少女が映る。


「まずは俺の地味可愛少女! 消極的ながらも今回、カラオケ対決に名乗り出たのは……東城樹里(とうじょうきり)だ!」



 片方は文学少女である東城樹里。……あのギャルが来るかと思ったが、そっちが来るのか。


 というかお前がMCやるのかよ。普通人呼ぶだろ。


「次に向こうからは……今や日本を担う、うら若き乙女。その美貌と歌声は全人類を魅了する……切長彩夏(きりながあやか)だ!」


 そして……もう片方は当然、切長彩夏。


 スポットライトが二人に当たる。彩夏は……普段の癖だろう。可愛らしく決めポーズを決め、会場が沸いた。



「カラオケ対決はかなり精密に機械で行われる。そこらのカラオケ店よりも、だ。よくテレビで企画される物と同じで百点なんて早々出ない。もちろんこっちが用意したからと言って不正はしないから。安心してくれ」



 ……なるほど。この前のように彩夏が百点を連発する事は難しいと言うわけか。


「そして……二試合目はこれだ! 二人のギャルによる料理対決!」


 また画面が切り替わる。


「こちらからは! 姫内冬華(ひめうちふゆか)! 数々の陽キャ陰キャ構わず振ってきた孤高のギャル! ギャルオブザギャルだ!」


 何言ってんだあいつ。ギャルオブザギャルって何だよ。……まあいいか。


 ちなみに、姫内の容姿は言っていた通りギャルだ。見た目だけ見れば活発なギャルだ。当然容姿も良い。

 というか、向こうの面々は零達に負けず劣らずといった感じだ。


 ……まあ。零達が劣ってる訳も無いんだが。

「みーちゃん。結婚する?」

「唐突にプロポーズしてくるな。断る」

「そして次にぃ! 数々のオタク君をぶった切った地雷系ギャル! 西綾星にしあやほしだ!」


 そして、星達にスポットライトが当たる。向こうは平然としているが、星は眩しそうだ。


「めっちゃ眩しいんだけど」

「最初は結構辛いんですよね。ボクも最初は目細めたりしちゃいました。でも、すぐ慣れますよ」


 そして、ルール説明。


「料理対決は審査員が五名、会場の中にいる学生から無作為で選出される。……その後、公平に目隠しをして食べて貰う! どちらかを選んで貰い、多い方の勝利だ! ちなみに作る料理は得意料理となる。一体両名は何を作るんだ!?」


 段々熱入ってきたな。あいつ。


「そしてそしてぇ……三試合目はクイズだ!」


 画面が切り替わり……おおっと歓声が沸いた。


「こちらからは学園のアイドル! そして俺の幼馴染である一条百花(いちじょうももか)と俺の超絶可愛い妹の紅露早希(こうろさき)が参加する!」


「あいつ……本当にブラコンなんだな。とはいえ妹に手を出すのは……」

「え? でもお兄ちゃん私で興奮してたよね?」

「最強のカード持ってこないで。泣いちゃうから」


 とかなんとかやっていると、零への説明へと入る。


「対してあちらも蒼音未来の幼馴染である! 九条零(くじょうれい)! こちらでアンケートを取ってみたところ、向こうの生徒で付き合いたい女子第一位だったぞ!」

「ふふん。そんな女子と結婚出来るなんてみーちゃんは幸せ者だね」

「夢って見てる間が一番楽しいんだよ」


 続いて新だ。


「そしてそしてぇ! もう一人は蒼音未来の妹の蒼音新(そうねあらた)だ! こちらもアンケートによると、妹にしたいランキング第一位となった!」

「ふふん。そんな女の子と結婚出来るなんてお兄ちゃんは幸せ者だね」

「夢って見てる間が以下省略」


 と、そして。二人にスポットライトが当たった。……二人は俺に抱きついていたので、当然俺にも当たる。


「光が熱い。離れろ」

「やだ。イチャイチャ見せつけちゃお」

「お兄ちゃんとなら私、熱いのも平気だよ?」

「視線が痛いし俺が熱いんだわ。離れろ」


 などとやっている間にルール説明が入る。


「クイズは十問。お互いの幼馴染と兄の問題が出される。相談は不可能で、どちらのチームの正解数が多いかの勝負だ! もし正解数が同じだった場合、サドンデスに突入! どちらかが間違えるまで続くぞ!」


 へえ……まあ、零なら間違えないだろうな。


「あれ……? でも俺別に質問とかされてないぞ?」

「ちなみに俺と未来は別室にてリアルタイムで質問をされる! 不正は不可能だ!」



 ああ。そういう事か。


「ちなみに零、新。自信は?」

「みーちゃんの事で私が知らない事は無いよ」

「私も!」

「いや、まあ。そう言うだろうと思ったが。……ちなみに星と彩夏は?」

「とにかく頑張るよ。未来君に恥かかせたくない」

「ボクも頑張ります。アイドルとしても、未来さんを……好きな人にかっこいい所を見せたいですから。負けられません」


 皆、自信満々のようだ。


「あ、それと。三本勝負で多く勝った方が勝利とは言ったが、もしストレートで二本。どちらかが勝ったとしても、三試合目は行われるから。そこん所よろしくな!」


 本当にキャラ変わってるな。まあ良いが。



 そして――


「それでは! これより第一試合を始める!」




 試合が始まったのだった。

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