最終回 4月
4月。うんうん、出会いの季節と言えるな。
「エレナお嬢様、結衣お姉さま、私もついに正式に後輩ですね!」
「おめでとうカレンちゃん。待ってたよ」
「楽しい思い出を作ってくださいね、カレン」
「はい! それにしてもひどいですよ結衣お姉さま! 私が入学した時点でもう勝負が決まっているなんて……」
「いやそれは……ごめんなさい」
「ふふっ、冗談です。それではまた!」
カレンちゃんは社交的だ。すでに友達ができているようで、すぐさま合流している。
私たちはクラス替えがないため、2年A組にそのまま繰り上がりした。
「おはよ、藍」
「おはよ……結衣」
「おっ、朝から熱いな2人とも」
「吹雪……からかわないでくれる?」
見てわかるように、桃園さんは自分の素を隠すことをやめた。まぁそれは私からの提案なんだけどね。
「それにしても結衣ちゃんひどいよなぁ。僕の告白をほったらかして桃園ちゃんに行っちゃうんだから」
「ほったらかしてないでしょ……あの時返事しようとしたし」
「はは☆ 逃げたのは僕の方なんだよな、実は」
あの時、保健室でたぶん私は吹雪さんの告白を断っていた。でもそうならずに済んだのは、吹雪さんに勇気がなかったおかげかもしれない。
「文化祭の伝説も踏んでたんでしょう? やっぱりすごいですね桃園さん」
「別に……ロマンチックだから結衣とやりたかっただけよ」
「おお〜言うね〜」
「慎見×桃園尊い……」
「あはは……新学期も賑やかなこって」
「む、先生が来たぞ」
ワチャワチャした空間の中、私は自席に戻った。変わり映えしないこの先頭の景色も、振り返ればA組を見渡せるお気に入りの席だ。
お昼になると決まって藍とご飯を食べる。春だからか、今日はやたらと未来の話になった。
「卒業後どうしようか」
「話が早いね。まだ2年の春だよ」
「そうだけど……あっ、メロンを食べさせる約束してたのに果たしてない」
「あ〜〜……そろそろ藍の実家にお邪魔したいかもね。メイドさんにも会いたいし」
「ふふっ、阿佐ヶ谷ってばまだ私と結衣が付き合っていること信じてないのよ」
「まぁ……わからないでもないかも」
やっぱりそうだ。藍と話すと楽しい。
今まで人と話すことなんて楽しいと思ったことはなかった。でもこうして藍と話すことで、幸せになっている自分がいる。
「藍」
「ん? どうしたの?」
「愛してる」
「なっ……何よこんな公衆の面前で!!!」
あはは……これもまた一つ、私からの勇気の形ってことで。
「そういえば藍はいつ、どうして私のことを好きに?」
「ふふ……恋バナした時に言ったでしょ? 人の痛みがわかる人が好きって」
「あぁ、覚えているよ」
「そこから先は自分で考えてね」
「えー、何それ! あっ、カレンちゃんを初めて見た時に驚いていなかったのもあの時こっそり名古屋駅にいたからか!」
「全部つながるね。面白いでしょ」
「チキンだっただけのくせに……」
「あはは、間違いない」
きっかけは10億円という金に釣られたものだった。でも手に入れたのは愛だった。
この土地に眠る金華さん……あなたはこの結末、予想していたんですか?
今度気を失ったら、感想を聞きに行こうか。
ご読了ありがとうございました!
皆さまの感想などに支えられ、無事また完結作品を生み出せました。
また、新連載「疑似家族プログラムで美少女4人のパパになった」が始まっております。
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