079 保健室トーク
体育で倒れた結衣さんを運び、私たちは保健室へとやってきた。
私だけでなくクラスメイト全員が駆けつけているため、保健の先生も困惑されているようでした。
「慎見さんが心配なのはわかるけれど、保健室に付き添うのは3人までよ。9人はちょっと……多すぎるわ」
というわけでじゃんけんをし、勝った私と吹雪さん、神村さんで結衣さんにつくことにした。
「なぁ本郷さん、どうして結衣ちゃんと仲がいいんだ? 中学が一緒なんだっけか?」
「はい。中学時代はそこまでお話できませんでしたが……その頃からお話ししたいと思っていたんです。見事にかわされていましたけどね。金楼に入ってから距離を詰められて今は楽しいですよ」
「ふーん。神村さんは?」
「わ、私はその……慎見さんに秘密を握られているので……」
「なんだよそれー、結衣ちゃんが悪者みたいじゃんかよー」
うりうりと肘で神村さんを突く吹雪さん。本当にパーソナルスペースの狭い方だと思う。
「そういう吹雪さんはどうなんですか? どうして結衣さんにこだわるんですか?」
「ん? ん〜……まぁいっか。結衣ちゃんには内緒だけどな、僕は数年前に結衣ちゃんに会っているんだよ」
「え? そうなんですか?」
「お、覚えているんですね」
「あー、バカにしただろぉ〜? このこの!」
再び神村さんを肘で突く吹雪さん。仲がいいですね……そういえば遠足も同じ班でしたっけ。
「結衣さんと過去に会って何をされたんですか?」
「ん? ……まぁそうだな。強いて言えば……僕が生まれた、かな」
「へ?」
「あははっ、こんなこと言っても困るだけだよなぁ。それに当の結衣ちゃんは忘れているみたいだしな」
たしかに結衣さんから吹雪さんと過去に出会っていると聞いたことはない。忘れているのか、単に話したくないのかはわかりませんが……。
「まぁいいよ。いつか思い出させるか、もしくは思い出さなくても結衣ちゃんは僕のものにするからさ」
「僕のものって……大胆ですね」
「うっ……ぶぶっ」
「おいおい大丈夫か神村さん!」
鼻血を盛大に噴射した神村さん。「ユリガ〜ユリガ〜」とよくわからないことをおっしゃっている。どうされたのでしょうか。
「まぁそうだな……僕の過去はまたいつか、な」
吹雪さんはきらっとウィンクしてみせた。