表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/85

077 カレンと葡萄

 カップルのフリしてカフェに入店すると、改めてカレンちゃんを意識せざるを得なくなった。

 ガーリー系というか、ともかくオシャレだ。小柄ながらにしっかりと着こなしている。

 問題は私だな。ジャージて。まぁアニメショップに行ったら直帰の予定だったし、仕方ないだろう。


「ご、ごめんねカレンちゃん。こんな格好で」

「いえいえ、機能的な服をお選びになる方を否定することはしません!」


 いい子や……お母さん泣いちゃう。

 母性がくすぐられているうちに店員さんがやってきて、席に案内された。もう頼むメニューは決まっているため、その場で注文することになる。


「カップル限定のパフェ、お願いします!」


 輝かしい目でパフェを頼むカレンちゃん。大人びているところがあるけれど、こういうところはまだまだ中学生だなぁと思う。


「お2人はカップルでお間違い無かったですか?」

「は、はい。お間違い無いです」


 少しの罪悪感。お嬢さまに対してだろうか。それとも店側に対してだろうか。

 しばらく待っていると紫色と白色のグラデーション鮮やかなパフェが運ばれてきた。なるほど、10月の時期にぴったりな葡萄のパフェか。


「葡萄の……パフェ……」

「ん? 葡萄苦手だった?」

「いえいえ! 大好きですよ♪」

「そ。それならよかった」


 スプーンが2つ置いてあるけどこのパフェはカレンちゃんのものだ。私は手をつけず、好きなものを頬張る美少女を監視させてもらおう。


「さぁ、結衣お姉さま食べましょう!」

「え? せっかくカレンちゃんの好きなパフェがあるのに私も?」

「2人で食べた方が美味しいですよ♪」

「でもお金が……」

「もちろん私が払います! 私のわがままですもん!」


 そう言われては仕方がない。後輩に払わせるのは気がひけるけど、残念ながら貧乏人としては飲み込むしかないからな。あとは空気が悪くならないよう、しっかり食べることが大事だ。

 大きな葡萄をスプーンですくって口へ運ぶ。ジューシーかつ甘い。タネもなくて食べやすい。うんうん、最高のパフェじゃん。

 まるでカニを食べる時のように……まぁ食べたことないけど。ともかく無言でひたすらパフェにかぶりついた。


 よくやく会話が再開したのは完食して、お支払いを済ませて店を出てからだった。


「……結衣お姉さま、葡萄の花言葉はご存知ですか?」

「ん〜……そういうのはちょっと疎くて……」

「では葡萄の花の開花時期は?」

「それもちょっと……」


 あんまりそういうことは勉強してこなかったからな。


「ちなみに葡萄の花言葉は陶酔、葡萄の花の開花時期は6月ごろです」

「へー。詳しいんだね」


 私がそう返すと、カレンちゃんは少しだけ顔を赤くして、二、三歩私から離れた。


「え、エレナお嬢様が結衣お姉さまをお慕いしたのが先でも……私は遅咲きの葡萄の花になるかもしれません! そ、それでは!」

「え、ええっ!?」


 なんかポエマーらしいことを言って走り去ってしまった。何が言いたいのかはわからなかったけど、まぁ……いっか。


「またね、カレンちゃん」


 思わぬ休日となったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 陶酔…6月…ジューンブライドかな?(グッ) 花言葉や開花時期で迫るの、乙女チックで良いですね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ