076 カレンのお願い
とある休日、私は街に繰り出している。
目当てだったアニメグッズを貯金叩いて購入し、帰ろうとしたその時に知った顔がそこにはあった。声をかけるか迷ったけど、向こうが気がついて子犬のように近づいてきた。
「結衣お姉さま! こんにちは!」
「こんにちはカレンちゃん。今日は1人なの?」
「はい♪ ただ……」
「ん?」
カレンちゃんはお洒落な雰囲気お店を見て、小さなため息をついた。
お店の外にはピンクと黄色の鮮やかなチラシが貼られておりそこには『カップル限定パフェ』の文字のみ掲載されておいた。なるほど、パフェが気になるんだな?
「パフェ好きなの?」
「えっと……はい、好きです」
恥ずかしがることないのに赤くなって肯定するカレンちゃん。まぁこのくらいの年頃になると大人びたいんだろうなぁ〜。それがパフェ好きなんて言ったら子どもみたいだから、隠したいのかもしれない。
「そっか。パフェ好きで限定パフェ! って出てるのに写真がなかったら気になるよね〜」
ただこのパフェはカップル限定。残念だが私は力になれないな。
「じゃあ私はそろそろ……」
「あ、あの結衣お姉さま!」
「……ん?」
私の腕を掴んで、涙目で何かを訴えるカレンちゃん。自分から言うのは恥ずかしいのか、私から本質を突くのを願っているかのような目だ。
だがまぁ私も普通にそれを言うのは恥ずかしいので、カレンちゃんに自分で言うように目線で訴えた。情けない先輩だなぁと思ったりする。
「その……エレナお嬢様を差し置いてこのようなことをお願いするのは本当に心苦しいのですが……1時間だけ、1時間だけ私の恋人になっていただけませんか?」
ぐっ……やはりそうきたか! 意外とカレンちゃんはぐいぐいとくる子だ。パフェのためならその要求をしてもおかしくはないと思っていた。
恋人のフリじゃなくて時間制限で恋人に、かぁ。いかにも純粋な子が考えそうな作戦だ。
「ごめんだけど時間制限ありとはいえ恋人にはなれないかな。でも……恋人のフリならいいよ」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
とても晴れやかな顔をしたカレンちゃん。引き受けてよかったなと思う。
ただ……私あんまりお金ないんだよねぇ。まぁカレンちゃんが全部食べるだろうからいっか。心配しなくて。
私はカレンちゃんと手を繋ぎ、お洒落なカフェへと入っていく。カレンちゃんの手の柔らかさに少しドキッとして店の空気感を味合うことができなかった。