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069 球技大会:前編

 鮮緑の芝の上に、私は立っている。本格的な天然芝はプロの選手と同じ環境らしく、思っていたよりテンションが上がる。


「それではこれより1年A組vs2年B組の試合を始めます!」


 審判はどっかで見たことあるな〜と思ったら日本のプロ審判だった。どこに金かけているんだよ……。


「ふっふっふっ、先輩の威厳、見せてあげますわよ〜〜!」


 高笑いしているのは小日向先輩だ。先輩の威厳とやらを見せてくれる予定らしいが、堂々とベンチに座っている。失礼だけどベンチに座っている姿、めっちゃ似合うわ。


「皆さん、円陣を組みますわよ」


 円陣といえば肩を組むものだ。なぜか私の隣を狙って数人がいがみ合っているけど、怒った有栖さんが柚子さんを引き連れて私の両隣を占拠したため円陣はどうでもよくなったらしい。


「相手は先輩……身体能力の面では上かもしれないけれど、わたくしたちだってできることを証明するわよ」

「「「はい!!!」」」


 A組10人のうち、ベンチに座る天月さんと神村さん以外は大きな声を出した。まるで部活。それほど通知表にかける思いが強いのか、はたまた私のような負けず嫌いか、それとも……A組のみんなが大好きだから負けたくないのか。

 どんな理由であれ、A組は団結した。1回戦目で負けてたまるか!


 ピーーーッ!!!


 耳をつんざくホイッスルの音で試合が始まった。

 私たちはサッカー部である三国さんを前半で使い、点を取って逃げ切る作戦に出ている。とにかく先に点を取ることが大事なのだ。

 相手がボールを保持する時間、予想通り元気娘の海咲さんは犬のようにボールを追いかけている。これが初心者というか、素人にとっては焦るものでいとも簡単にミスが生じた。


「マリンちゃ〜〜んキック!」


 変な技名でシュートを放った海咲さん。

 威勢は良かったけど精度が足りず、ゴール右へと逸れてしまった。


「あー、残念」

「ナイストライよ、続けましょう」

「うん!」


 先輩キーパーが蹴ったボールはあんまり飛ばずに中盤あたりに転がってきた。上背はないけど身体の当て方を熟知している三国さんは簡単にボールを刈り取り、燃える闘志で前を見た。

 それを感じた攻撃の選手である私は信じて走るしかない。幸い先輩たちは攻撃に運動神経のいい人を集めているようで、守備は脆かった。


「三国さん!」

「ふっ!」


 地を這うロングパス1本。それだけで相手ゴールキーパーと1vs1まで持って来れた。オフサイドは……ない!


「や、やらせない!」


 先輩キーパーはそこそこ大きいけど大丈夫。サッカーは貧者のスポーツ。どれだけ私が壁に向かってボールを蹴ってきたと思っている!


「やあっ!」


 私の蹴り上げたボールはゴールを突き刺し、A組に点数をもたらせた。


「よしっ!」

「ナイスです! 結衣さん!」

「結衣ちゃーーん! カッコよかったぞ〜!」

「ありがとう!」


 めっちゃ気持ちいい!

 その後、三国さんが下がってもなんとか耐え切った私たち。というか先輩たちの連携が悪くてすごく助かった。

 試合終了した時点で1-0。いわゆるウノゼロ勝利ってやつだ。


「きぃぃ! わたくしの通知表が……!」

「小日向先輩……1秒たりとも出番ありませんでしたね」


 いったいなんなんだろうな、あの先輩。面白いけど。

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