005 自己紹介:後編
何を話したらいいものかと考えながら立ち上がり、一度軽く喉を鳴らして調子を整えた。
「あー……出席番号6番、慎見結衣です。父は他界していて、母はスーパーのパートやってます。よ、よろしくお願いします」
父が他界、そしてスーパーのパート。この2つに対して教室がざわついた。
「ねぇねぇ! スーパーのパートって、グランドロイヤルマーケットの社長さんってこと?」
「え? いや……その辺のウィオンのレジ打ちパートだけど」
右斜め後ろの席の桃色髪の少女がザワつきを破り、質問を投げてきた。私の回答にまるで宇宙の断片を見たかのような顔をしている。そうか……スーパーのパートをしているお母さんを持つ生徒はここにはいないのか。
「おい、ザワザワするな。慎見は俗にいう庶民というジャンルの人間だ。生活水準の違いはあるかもしれないが、仲良くするように」
先生のフォローはあまりフォローになっていない気がする。
恥ずかしさを目一杯に感じながら席に座った。
「出席番号7番、本郷エレナです。中学まではお父さまの方針で公立中学校に通っていました。皆様と仲良く過ごしたいと思います。よろしくお願いします」
丁寧な自己紹介をして、エレナも席に座る。まぁ私とは出ているオーラが違うから、公立中学出身とはいえ皆からの受け入れも早そうだな。
次に右隣に座る三国さんが立ち上がった。その左目には……なぜかいつのまにか眼帯をしている。
「拙者は三国若菜。古くは戦国大名の家系にあり、名家として残ってきた一族である。皆のもの、どうかよろしくお願いいたす」
ペコリと、短めのツインテールを揺らしながら一礼した三国若菜さん。
癖のない人かと思ったけど、結構濃いめの子だったか。
そしてついにと言うべきか、やたら色んな人に絡む右斜め後ろの桃色髪の生徒が立ち上がった。
「出席番号9番、桃園藍だよ☆。みんなといっぱいいーっぱい仲良くしたいから、たくさん話しかけるね! よろしくね〜」
あざとっ! ひと昔前のアニメでもそうそう見ないようなキャピキャピした子だ。
元気いっぱいの陽キャか。私とは正反対だな。
「最後は僕だね。出席番号10番、吹雪・ヤルクスベリ。この白髪は地毛なんだ。名前から察せると思うけど、僕のパ……父はスウェーデン人なんだ。これからよろしくね、みんな」
白の短髪でボーイッシュな印象を受ける少女は王子様のようなスマイルで自己紹介を終えた。
この10人が、私たち1-Aだ。
この中に私をこの学園に導いた「お嬢さま」はいるのか。それともいないのか。
すぐにその答えを見つけてやる!