064 ハードな文化祭
「すみませーん。たません4つ。3つはチーズ入りで」
「はい! かしこまりました!!」
文化祭当日。A組は私、天月さん、エレナ、桃園さんを調理班として他の子は宣伝・広報に回っている。
その効果が絶大なのか、たませんを求める行列がずらりと出来上がっていた。
「次5つ。その次のお客さんはソース少なめで!」
「は、はいぃぃ……」
こんな激務は経験したことないのだろう。天月さんもエレナも桃園さんも余裕がなくなっている。
私がレジをしていたらダメだ。広報を減らしてレジを増やそう!
「ちょっとレジの人探してくる!」
「あっ、待って!」
飛び出そうとした私の手をを桃園さんが掴んだ。
「闇雲に探したら時間かかるよ。有栖ちゃんたちはここにいるから」
「あ、ありがとう」
しまった。熱気と忙しさにやられて冷静さを欠いていた。
桃園さんから貰った地図のおかげですぐに有栖さんたちを見つけられた。事情を説明するとすぐに接客に向いてそうな明るい海咲さんと柚子さんがヘルプで来てくれた。
「よしっ、私も今から調理ヘルプいけるから!」
「みんなで頑張りましょう!」
エアコンが効いているとはいえ、調理している部屋では熱気がこもる。そのため汗も少しずつ滲み出てきた。
エレナたちはタオルを用意していて、すでに汗を拭いているようだった。
タオルを忘れた私はどうしたものかと思っていると、桃園さんが「何してんの」って顔でタオルを渡してくれた。額と鼻の下の汗を拭き、調理に戻る。本当に大変な仕事だ。
「みなさん! 材料が無くなりそうです……」
「えっ!? もう!?」
まだ文化祭が始まって2時間しか経っていないのに! なんでこんなにたませんは売れるんだ?
ともかく今は材料を買い足すしかない! 私は柚子さんに材料が切れたことを伝え、買い出し班を作ってもらった。
様々なトラブルを乗り越え、ついにピーク時間となる12時を迎えた。この時点でもういっぱいいっぱいなのに、これ以上やってられるかよ!
「結衣ちゃん! 手伝いに来たぞ」
「私たちにできることはありますか?」
「吹雪さん! 神村さん! 助かるよ、できたたませんをレジに運ぶ作業をお願い!」
これで少しだが作業が効率化できる。
こうしてなんとかピーク時間を乗り切った。
すごく疲れたけど……なんか楽しかったな。いやまだ文化祭を楽しめてはいないけれども……。