060 私の幸せ
楽しかった親睦会も終わり、私たちはそれぞれの家に帰ってきた。それにしても……あんまり寝れなかったなぁ。
私は今まで自分の恋愛に向き合ってこなかった。もし……もしお嬢さまを言い当てたとして、10億円をもらって、それで私は「はい、さようなら」と突っぱねるのだろうか。その先、それこそお付き合いをするようなことになるのだろうか。
私がみんなの前で言った、「自分のことを好きになってくれる人が好き」というのは嘘ではない。だからお嬢さまのことも結構好きだ。考えれば考えるほどわからなくなってくるな。
「ねぇお母さん、私が誰かと付き合うって言ったらどう思う?」
自分だけで解決できる話ではない気がして、お母さんに頼ることにした。
「すごく良いことだと思うわ。酸いも甘いも経験して、最終的に結衣ちゃんが幸せになってくれるとお母さん嬉しい」
「酸いも甘いも、かぁ」
A組のみんなは本当に魅力的な人たちばかりだ。それこそ自然に惹かれてもおかしくないくらい。
だって彼女たちは庶民の私を受け入れてくれた。たまにナチュラルに鼻につくことはあるけれど、意図的に私の生活水準を見下そうとはしない。
私も恋愛して……いいのかなぁ。
「結衣ちゃんの学校、夏休みが終わったら文化祭があるでしょう? 文化祭っていい雰囲気になることもあるんじゃないかしら?」
「確かに……ちょっとだけ意識してみようかな」
文化祭マジックというか、その影響で恋愛に発展することもあるかもしれない。
そんな人たちがいたら、少し恋愛について聞いてみたい。私はどうするべきなのか、どうあれば幸せなのか、答えを見つけたい。
こうして……私たちが通う金楼の、恋模様うずまく文化祭が始まる。