004 自己紹介:前編
決意を決めたところで、ゾロゾロとクラスメイトたちが入ってきた。
右隣に座った三国若菜さんが「よろしく」と軽く挨拶をしてくれたため、こっちも軽く返す。
いつの間にか先生も教室にいて、さぁ高校生活の始まりだと言わんばかりの表情だ。
「よし、揃ったな。1-A担任、佐藤だ。お前たちお嬢様たちの扱いに慣れているというわけではないが、困ったことがあったら気軽に相談しろ」
話し方は少し男勝りな感じで、ちょっとだけ威圧感を受ける。
「じゃあ自己紹介を始めろ。出席番号1番から。えっと……天月」
「はい!」
透き通る声で返事をしたのは白髪ロングの美少女だった。
高くて、引き込まれるような声が特徴的だ。
「天月歌子です。父はオペラ歌手で私もオペラを習っています。皆さまどうぞよろしくお願いいたします」
ほへ〜……オペラか。すげぇわそれ。
「あたし、テレビで歌子ちゃん見たことあるよ! すっごいお歌が上手だったよね!」
「あ、ありがとうございます」
右斜め後ろの桃色髪の少女が天月さんに食いかかった。テレビ出演もしているとは、さすがお嬢様学校だ。
……っていうかナチュラルに親の身分について紹介してたよな? この界隈では当たり前なのか?
「では次」
「はい! 出席番号2番、海咲マリンですっ! こんな名前だけどハーフでもなんでもない日本人ですっ。両親が海運業の社長なので、あたしも海が大好きです! もし海で会ったらよろしくね☆」
片目を閉じて、あざとく自己紹介を終えた海咲さん。
日焼けした肌と、肩までで切り揃えられた水色の髪が爽やかで健康的に映る。
「次」
「は、はい! か、神村巫女です。家の神社で巫女として授業しています……。ひ、人見知りなのでこの辺で……」
黒髪ロングの清楚なイメージを受けた神村さんは恥ずかしそうに席についた。
ここまで3人自己紹介してくれたわけだけど、やっぱりこういう学校に通う生徒って濃いなぁ。
自己紹介をするべく、隣の席の有栖さんが立ち上がった。
「出席番号4番、御陵院有栖と申しますわ。何か困ったこと、相談事があればいつでもお尋ねください。どうにかしますわよ」
な、なんかガチっぽい。先生より頼りになりそうって言うと先生に怒られそう。
「出席番号5番、土御門柚子です。古くは陰陽師の家系です。アリス様のメイドをやっていますので、アリス様がご多忙の時は私に話してくだされば仲介します」
あくまで柚子さんは有栖さんのメイドとして、一歩引いた学生生活を送るつもりなのかな?
「おい、次だぞ」
「あっ……私か」
ついに、私の番が来てしまった。
夕方に後編を更新します!