057 みんなでBBQ
飛行機から降りると明らかに空気が一変した。
暑いけど不快ではない。そしてマリンブルーの海は太陽に照らされ、キラキラと光り輝いている。ロケーションも最高だ。
「それでは別荘に荷物を置いてくださる? まずはお昼ご飯ですわ」
有栖さんの指示に従い、別荘の玄関から1番近い部屋に荷物を置いた。
柚子さんが冷蔵庫からたくさんのお肉や野菜を取り出し、クーラーボックスに入れて持ち運ぼうとしている。
「手伝いますよ」
「ありがとうございます」
そういえば柚子さんとお話しするのって珍しいかも。いつも静かに有栖さんを護っている感じだもんね。
「柚子さん……これってもしかしてBBQですか?」
「はい! 美味しいですよね、BBQ」
柚子さんはキラッとした笑顔を見せてくれた。お嬢様でもBBQするんだ……。
逆に貧乏でもBBQするんだ、とか思っただろ? 夏場に賞味期限が迫ったものを一掃するにはBBQが1番手っ取り早いんだなこれが。田舎のおっちゃんからもらう大量のとうもろこしとか食べられるし。
みんなはもう広い庭に出ていて、3つのバーベキューコンロを囲んでいた。スタッフの女性と思われる人が慣れた手つきで着火しており、あとは具材を乗せればいつでも焼けそうだ。
「はい、それではA組の親睦会を始めますわ。皆さんとは約4ヶ月を共にしてきました。これからもこの仲は続くことでしょう。それではコップをお持ちになって……乾杯!」
「「「かんぱ〜〜い」」」
BBQながら、どこか品格を感じるスタートを切った。その辺の学生がやるBBQとはわけが違うな。
「結衣さ〜ん! お肉焼けてきましたよ」
「早いね。ってかすごいいいお肉じゃない? これ」
「結衣ちゃんタレならあるぞ〜」
「あ、ありがとう」
「つ、慎見さん! お水入りますか?」
「あ、うん。貰う貰う」
10人もいるとさすがに忙しいな……まぁ食べることメインより会話メインにしたほうが良さそうだな。
「ねぇねぇ結衣ちゃん! 楽しいね!」
「う、うん。そうだね……」
ピッカピカ笑顔の桃園さんについ後退りしてしまった。心の中では何を思っているのだろうか。
「あー肉! やっぱ肉だ〜」
「吹雪さん……品がないですよ」
「硬いこと言うなよ天月さ〜ん」
「ってか海海! 魚捕まえようよ!」
「やめておくがよい。ずぶ濡れになるぞ」
「海なら食後に入ってもいいわよ。もちろん浅瀬までね」
そこかしこで盛り上がっている。なんか……いいクラスに入れたんだなぁ、私。
初めてかもだけど、「お嬢さま」にめちゃくちゃ感謝する瞬間になった。