046 体育祭:後編
「ったぁー! くっそー、結衣ちゃんにダサいとこ見せちゃったなぁ」
「そんなことないよ。吹雪さんが速いからこそ柚子さんが巻き返せる位置をキープできたんだよ。お疲れ様」
「あははっ、天使か〜?」
天使ねぇ……貧乏な天使ってなかなか想像つかないけど。
「さぁ二人三脚に行こうか。吹雪さんはエレナとでしょ? 引き続き頑張ってね」
「あぁ。歌子ちゃん、結衣ちゃんを頼んだよ」
「えっ? は、はい!」
私の体育祭はこの最終種目から始まる!
天月さんの肩を抱いて、拘束具を足につけた。その時密着するから、天月さんが少しだけ震えているのがわかった。
「……大丈夫だよ天月さん。練習通りやれば負けないって。それに私と天月さんは夢を語った仲でしょ?」
「は……はい! 頑張ります!」
まぁ夢を語ったのは天月さんだけなんだけどね。
「では1年生の部、二人三脚を始めまーす。よーい……スタート!」
始まった! いっせいに、示し合わせたかのように「せーっの!」って各所から聞こえてくる。そんな中、私と天月さんはこんな言葉を口から発した。
「L!」
「O!」
「V!」
「E!」
「L!」
「O!」
「V!」
「E!」
そう……これが私と天月さんが練習で編み出した必殺技、アニソンのいい感じの部分で息合わせ!
私と天月さんの共通点はアニメが好きだということ。だから今回はアニソンの冒頭部分で「L・O・V・E」と歌うアイドルアニメから引っ張ってきたのだ。
他のペアは「いち、に、いち、に」と言っている中、私たちは「L!」「O!」「V!」「E!」と言っているのだから不気味だろう。だがこれで不思議と速くなったのだ。
私たちは先頭へ抜け出し、往復ポイントとなるカラーコーンまでたどり着いた。ぐるっと回って進路を180度変え、さぁもう一度だ!
「いくよ天月さん!」
「うん……慎見さん!」
「L!」
「O!」
「V!」
「E!」
「L!」
「O!」
「V!」
「E!」
私たちの珍妙な掛け声にクラスメイトも驚いているようだったけど、見事に他の追随を許さず1着でゴールした!
「やったよ天月さん! やっぱりアニソンはいいね」
「はい! 心が……慎見さんの心が直接伝わるようでした!」
1着をもぎ取った私たちA組は総合1位になり、大逆転で体育祭1年生の部を優勝した。
ふぅ、お嬢様を倒したし、青春っぽいことできたし、満足満足!
明日の更新はお休みです。




