041 メイドさん奮闘記③
京都市内のアンダーグラウンドでライダースーツを脱ぎ捨て、冷えたタオルで顔を冷やす。
どうも皆さんごきげんよう。わたくし、とあるお金持ちの家のとある屋敷のとあるお嬢さまのとあるメイドでございます。
本日は結衣様を……誘拐してみました。名演技だったでしょう? 最優秀助演女優賞をいただきたいくらいですよ。
それにしてもまさか一撃喰らうとは思ってもいませんでした。一瞬意識が飛んだものの、すぐに取り戻して逃げられたのは幸運でしたね。
この結衣様への接近と接触はお嬢さまにはお伝えしていない、いわば勝手に動いたもの。知られればクビは間違いないでしょうから、変装して正解でした。
さて……お嬢さまのみならず、結衣様は色々な方から慕われているようですね。
……まったく、お嬢さまの恋路を塞ぐものが多すぎて困ってしまいますよ。
あら……電話ですね。しかもお嬢さまから。これは出なくては。
「もしもし? どうされました?」
電話の先でお嬢さまは興奮気味に今日の出来事をお話しされる。
そのほとんどが結衣様関連のことで、屋敷にいるときとそう大差はなかった。
「結衣様が無事で良かったですね」
まぁ絶対に無事に返すつもりだったんですけれどね。
そう言ってしまってはつまらないですし、何より結衣様を無許可で誘拐してことがバレたら……まぁロクなことにはならないでしょう。
「えぇ。お楽しみください。それでは良い夜を」
電話を切り、再び顔に冷えたタオルを当てた。この痛みが引くのはいつ頃でしょうか。
もう少し、賢い接触をする方がよかったですかねぇ。……まぁ良しとしましょうか。