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039 事件後、部屋で

「「「「カンパーーイ」」」」


 京都府内にある、超高級ホテルの一室にて私たち四人班はオレンジジュースで乾杯した。

 この宿泊学習1日目はとても素晴らしいと言えるものではなく、散々な1日目になった。何においても誘拐されたことが一番の最悪ポイントだっただろう。

 しかしながら誘拐というイベントはネガティブなものだけを生み出したわけではなかった。私たちは事件を通じて団結力が生まれ、強い仲間意識が生まれた。


「いや〜、でもまさか犯人が金楼生を資金源にしようと企んでいただなんてね。結局逃げたって話だけど」

「私以外が誘拐されていたら大変だったかも?」

「大変どころじゃないと思います……。きっと大事件になっていましたよ」


 いや、庶民だからって本来大事件になるものをボヤ程度に格下げしないでくれよ。


「でも何より驚いたのは……桃園さんが結衣ちゃんに発信機を付けていたことだね」


 吹雪さんは若干笑顔のレベルが引き下がった顔で桃園さんを見た。

 私もその件に関してはとんでもなく重視している。だってわざわざ発信機を付けるだなんて、正気の沙汰じゃない。お嬢さまとやらの確率が一気に上がったことになる。


「だって結衣ちゃん危なっかしいもん! 京都初めてみたいだから迷子にならないかな〜って心配だからつけたの。お守りGPSみたいなものだよ」

「その割には強力なものを付けていたみたいだけどな。ジャミングすら通り抜けるほどの、しかも音が鳴る機能までつけてさ」

「…………」

「ま、まぁまぁ、落ち着きましょう? ね?」


 神村さんがヒートアップする部屋を落ち着かせてくれた。吹雪さんとしてはどうして発信機を私に付けたのか、気になるらしい。もちろん私も気になっているけど。

 ただまぁ今回はそれのおかげで助かったんだから許すとするか。……もちろん私の中での疑いが強まったのは揺るがないけど。



「明日は警備を増やして団体行動で奈良だからさ、まぁ楽しくいこうよ。ただちょっと桃園さん、二人きりで話さない?」

「うん、いいよ」


 吹雪さんと神村さんに目配せして、桃園さんと二人きりにさせてもらった。

 ベランダに出ると夜はまだ肌寒く、半袖のパジャマでは寒風にほんのり堪える。


「はぁ、なに? 私のこと疑ってんの?」

「疑ってる……っていうより疑問に思ってる。なんで発信機なんて付けたのかなって」

「……慎見さんは唯一私の本性を知っている。そして今回同じ班になった。変なところで言いふらしていないか監視するために付けたの」

「そ、そうなんだ……」


 これはかなり説得力のある言い分だった。まぁ確かに不安に思う気持ちがあるのなら発信機も付けちゃうかもね。金持ちならね。


「ヤルクスベリも神村も必死だったよ。好かれてるんだね」

「あはは……ありがたいことで」


 桃園さんはどこか面白くなかったのか、ムスッとしてオレンジジュースを飲み干した。


「一応聞いておくけど、怪我とかしてない?」

「え? してないけど……」

「あっそ。じゃあ部屋戻るから」


 素の桃園さんは消え去り、きゃぴきゃぴ笑顔を保ったまま部屋に戻った桃園さん。

 そっか……桃園さんも心配してくれてたのかな?

 だったら疑うようなことして、悪かったかも。

 はぁ……お嬢さま探しも本当に難しいな、これ。

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