003 有栖と柚子
1-Aクラスに入ると、まだ誰も教室には来ていなかった。クラスを確認して、一喜一憂しているのかもしれない。
普通の広さの教室に机が10脚しかないと、かなり寂しさを感じるのだなとわかった。
机の右上には名前プレートが貼られており、廊下から入って2列目の1番前に「慎見結衣」と書かれた机があった。
私の出席番号は6。エレナは7なので、必然的に後ろの席はエレナということになる。
「よろしくお願いしますね、結衣さん」
「うん。よろしく」
「お嬢さま」候補筆頭であるエレナは後ろにいるが、これから入ってくる少女たちも候補者たちだ。
とりあえず両隣の少女の名前だけは把握しておこうと思って、右と左の机に貼られたネームプレートを確認する。
右が「三国若菜」で、左が「御陵院有栖」か。なんというか、どちらも品がある名前であるように思う。
名前を確認し終えたところで、前の扉から1人の黒髪ボインの少女が入ってきた。凛とした表情からは何かしらの覚悟が伺える。
その少女は突然に跪き、手を掲げて誰かを迎える所作のようなものを始めた。
「アリス様、どうぞお入りください」
「ありがとう、柚子」
おぉ、この人たちも知り合い同士で同じクラスなんだ。
黒髪ボインの少女の後に続いたのは金髪紅眼の美少女だった。
金髪ロングや美少女であるという点はエレナと同じだが、柔和なエレナに対してこの人は凛々しさと強さを感じる。
どうやら「御陵院有栖」とはこの人のことだったようで、私の左隣に座った。
「よろしくお願いしますわ。あなたは……慎見結衣さんね」
「は、はい。よろしくお願いします」
なんだかこの人と目が合うと緊張するな……。
しかもなんだかジロジロ見られている気がする。
「なんだかあなた、訳ありのようね」
「えっ? なんで分かるんですか?」
「オーラとか……かしら。わたくしには分かるのよ」
理由になっていない気がする!
そしてまったく同じ言葉を返すけど、私には分かる。
たぶん有栖さんは私に惚れた「お嬢さま」ではない。こんなに堂々とした人なら私に惚れた瞬間にアタックしてくるはずだ。そして何より……
「へー、柚子さんメイドなんですね」
「そうなんですよ。アリス様のお付きで入学したわけです」
「……柚子、少し距離が近すぎるのではないかしら?」
エレナと話をしている柚子さんに、少しモヤっとしてる様子。これは……有栖さんの本命は柚子さんだ!
早速「お嬢さま」候補から1人……いや2人外れた。
さぁ、どんどん消去法で潰していって、「お嬢さま」とやらを言い当ててやる!
夕方に「1-A概要」なるものを投稿します!
徐々に更新するタイプのものとなっております。
また、有栖と柚子は私の過去作からの参加になってくれました! 異世界に行っていない世界線の2人です。こちらもまたお楽しみください♪