035 出発
宿泊学習の朝は早い。
いつもより30分早く起きて、学校に向かう……と思うじゃん? なんとバスの送迎は家まで来ていた。
……こういうのってさ、普通学校に集まってから行くじゃん。なんで各家庭を回ってるのよ。
まぁ楽だからいいか、と思って乗り込むともうすでにA組のみんなは集結していた。
私だけ庶民が住むエリアに住んでいるからか、私が最後のようだ。こういうところでも格差を感じる。
私は同じA組1班の桃園さんに手招きされ、バスの座席に座った。となりは吹雪さん。なぜかドヤ顔だ。
ちなみに他の班員構成はというと、A組2班がエレナ、三国さん、天月さん。実に仲良くなって欲しい班だ。
そして残ったA組3班が有栖さん、柚子さん、海咲さん。こちらはどう化学反応を起こすか、ちょっと楽しみである。
「結衣ちゃーん! はいこれどーぞ」
「……? ありがと。何これ?」
「キャラメルだよ。美味しいよ」
「へー。いただきます……あっ、美味しい」
桃園さんは旅行慣れしているというか、陽の気を纏っている今の段階では楽しむための必須パーソンのように思える。失礼かもだが吹雪さんにこういうものを準備するようなアレはない気がするし。私もないけど。
「おっ? な〜んか僕の悪いこと考えていただろ〜」
「うぇ!? そ、そんなことないよ?」
なんで見抜くかなぁ。
そして妙に静か……いや、普段から静かだけども。ともかく神村さんはせっかく立候補して班員になれたのに桃園さんの隣で黙って座っている。
神社で話をした感じ、たぶん話すことは嫌いではないと思うんだよなぁ。じゃあちょっとお節介かもだけど、話しかけてみるか。
「神村さんは今日の自由行動で行きたいところある?」
「えっ? えっとその……抹茶スイーツを……食べたいです……」
抹茶スイーツか、いいね。
旅費はどうするんだって思うかもしれないけど、昨日私の家のポストに現金10万円が突っ込まれていた。差出人「お嬢さま」で。まぁ要するにこの旅行で使えってことだろう。金額の規模がおかしいが……。
だから全然豪遊できる。抹茶スイーツくらい痛くも痒くもないだろう。
「吹雪さんと桃園さんはどう? 抹茶スイーツ食べたいんだけど」
「全然オッケー。僕も食べたいよ」
「美味しそうだね☆ 早く着かないかな〜♪」
よかった。この班なら神村さんの意見も通せそうだな。
……なんか私、結構周りのことを見て動いている気がするなぁ。もしかしてお嬢さまとやらも、私のこういうところに惚れたのか? 自分で言うのもアレだな、うん。