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031 お嬢様セレクト中

 30分ただ待っているというのも退屈なので、それぞれお嬢様方の様子を見に行くことにしてみた。

 まずはマネキン立ち並ぶ桃園さんセレクトのお店へ。


「すっごい可愛い系だね。こういうのが好みなの?」

「……んなわけない。キャラ付けよ」


 2人きりになった途端に素になった桃園さん。そういえばこんな性格だったね。

 死んだ目で可愛い服を見ている桃園さん。楽しい……のかな?


「はぁ、慎見さんに似合う服なんてここにあんのかな」

「悪かったね地味で」

「…………」


 なぜ無言になる!

 ここは居心地が悪いので、足早に反対方向のお店に向かった。

 エレナのセレクトしたお店には高校生から大学生くらいまでのお客さんが多く、安定した選択をしたのだとわかる。ただし値段は可愛くなく、不意に見えた値札には8000円の表記があった。


「エレナ、調子はどう?」

「結衣さん! このようなシルクのお洋服はいかがでしょう?」


 ふわりとした、天使の衣装のような服をエレナは私に合わせてきた。


「いやいや……私にそれはキツいでしょ」

「そんなことありません! 結衣さんはもっと愛くるしい格好をするべきです! そう、まるでお人形さんみたいな……」


 あ、やばいエレナが妄想の世界へトリップしてしまった。

 なんか怖いので足早に次のお店に向かう。

 吹雪さんがチョイスしたお店は服屋というよりスポーツ用品店だ。サッカーボールとか普通に置いてあるし。


「おっ、結衣ちゃん来てくれたのか。どうだ〜? これ。動きやすそうだろ?」


 めっちゃよく見るスポーツ用のジャージを自信満々に掲げてきた吹雪さん。私はランナーか何かか? とツッコミたくなるけど、たぶん吹雪さんは本気なんだろう。


「スポーツ好きなんだね」

「あぁ。というよりフリフリ系が苦手でね」


 なるほど……実家では着せられているんだろうなぁ。少し見てみたいかもしれない。


「おっ、結衣ちゃん見てみろよ、有名選手のサインが……ってあれ?」


 スポーツのうんちく聴き放題プランに入りかけたので、なんとかこっそり抜け出すことにした。

 さて、あとは海咲さんか。

 海咲さんの向かったお店は大胆というか、セクシー系の服がいっぱい並んでいた。肩や脇が出るなぁ……。


「あ、慎見さん! こっちこっち〜」


 呼ばれたので近づいてみると、肩も脇も背中も露出したとんでもない服を持っていやがった!


「いやそれは……見えちゃうじゃん色々と」

「えー? そうかなぁ」


 海咲さんはもう少し他人の目線を気にした方がいい気がする。善意の目だけでなく、悪意の目だってあるのだから。


 それにしても……お嬢様も十人十色だな。一体どんな服を充てがわれるのやら。

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