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022 突撃、吹雪さんの家

 小日向先輩との騒動があった次の日、当然ながら教室に吹雪さんの姿はなかった。

 吹雪さんの手が早かったとはいえ、幾らかは自分のせいで……と思ってしまうため、罪悪感を持たざるを得ない。

 このモヤモヤを1週間抱えて生きていくことはできなさそうだからと、1番頼りになる有栖さんにとあるお願いをすることにした。


「あの……有栖さんって吹雪さんの住所とかって知らないかな?」

「……もちろん知っていますけど、貴女はどうするつもりなのかしら?」


 何かを見定めるような視線を私にぶつけてくる有栖さん。緊張からか、身体が強張る気がする。


「吹雪さんにお礼と謝罪がしたくて。私のせいで1週間も謹慎になっちゃったから……」

「まぁそんなところだろうと思っていたわ。まぁ別に教えてもいいんだけれど……どうしようかしらね?」


 有栖さんは目を細めて、私の目をジッと見た。

 なんだろう……有栖さんは何を求めているんだろう。


「はぁ、圧をかけても察しが悪いんじゃ意味がないですわね。吹雪さんのご自宅を教える代わりに、わたくしには貴女が抱える秘密を教えてくださるかしら? そう具体的には……なぜ貴女がこの学園に通えているのか、とかね」


 その要求でハッとした。そういえば「お嬢さま」を探していることを口外してはならないとは一度も言われなかった!

 うまくいけば有栖さんを仲間にして、有利にことを運べるかも……?


「わ、わかりました。時間があって2人きりの時に必ずお伝えします」

「えぇ。楽しみにしているわ。これ、吹雪さんが今いる場所よ」


 有栖さんは一枚のメモ用紙を取り出し、私に渡してきた。

 ……今書いたわけではなく、あらかじめ吹雪さんの居場所を記入していたようだ。まさか私が有栖さんに吹雪さんの居場所を聞くことを見抜いていた? ま、まさかね。


 放課後になった瞬間、私は学園から飛び出して吹雪さんの住所へと向かった。その近辺に着くと、いい感じの新築一軒家が並び立つ住宅街が広がっていた。

 ……っと、ここか。

 セキュリティもぱっと見では厳重そうな綺麗な家だ。ここに吹雪さんが住んでいるのだろうか。


「よー! 結衣ちゃん!」


 突然に名前を呼ばれて肩を震わせた。見上げてみると2階の窓から吹雪さんが乗り出して手を振っていた。


「吹雪さんに会いに来たんだけど、入れてもらっていい?」

「もちろん。嬉しいよ、ちょっと待っててね」


 ドタドタドタと階段を降りているのであろう音が響く。その数秒後には茶色いドアが勢いよく開かれた。


「よっ、結衣ちゃんいらっしゃい」

「お、おじゃまします」


 ……吹雪さん、なんかサイズ感があってない大きめのTシャツ着ているけど、なんか想像通り家ではだらしないんだな。

 中に入ると、必要最低限のもの以外は揃っていなかった。エレナの屋敷みたいに絵画とか、謎の甲冑とかがない分親しみやすいかも。


「シンプルな家に住んでいるんだね」

「あぁ。パパとマ……父さんも母さんも本邸に住んでいるからね。この家は僕のための小屋だよ」


 こ、小屋……この立派なピカピカの家が小屋ですかそうですか……。

 金持ちと貧乏人の差は埋まることはなさそうだな。


「一人暮らし、大変じゃない?」

「いや? 僕専属のメイドがいるし、家事はやってもらってるから不自由はないよ」

「……そうですかい」


 これだから金持ちは……。

 なんだか吹雪さんへの謝罪と感謝の気持ちが薄れていく……そんな感覚なのでした。

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