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021 禍根が生まれる

 あれだけ凄んでいた小日向(こひなた)先輩だったけど、どうせもう来ないだろ〜とたかを括っていた。

 しかし、放課後になって廊下からドスドスと足音が聞こえてきた瞬間、あぁダメだと確信する。


「慎見さん! お話がありますわっ!」


 金髪の縦巻きロール。忘れたくても忘れられないインパクトを持った少女が私を訪ねてきた。

 その機に立ち上がったのは吹雪さんとエレナ。共に険しい顔をしている。


「小日向先輩、落ち着いてください。とりあえず逃げませんから、落ち着いて、ね?」


 鼻息荒い小日向先輩を落ち着かせ、三国さんに許可を取って席を向かい合わせにした。対談の席を作るのだ。その際三国さんに「大変であるな」と言われたけどまさにその通りです……。


 とりあえず小日向先輩を座らせようと思ったら、エレナと吹雪さんが自分の机を持ってこちらへやって来た。……え? 参加する気?

 私の両隣にエレナと吹雪さん。そして向かい側に小日向先輩。なんだこれ、面接かよ。


「ま、まぁ後輩がいくらいようと構いま……」

「で? 何で結衣ちゃんを退学させようとしているんだよ」

「そうですね。それを聞かないと始まりません」


 小日向先輩の話を遮り、吹雪さんとエレナが質問を投げかけた。もうそれだけで小日向先輩はたじろいでいる。


「も、もちろん金楼のブランドを護るためですわっ! 創立から百余年……これまで金楼は上級国民の学校としてのブランドを護ってきました。それが今年は……今年は! どんな手を使ったのかわかりませんが下級国民たる庶民が入ってきたと聞きましたの! 実際見てみたらほら汚らわしい。こんなのが金楼を卒業しては百余年の恥です!」

「だから結衣ちゃんは出てけってか。へーーーー」

「ずいぶんと愉快なことをおっしゃるのですね。先輩」


 吹雪さんは敵対する気満々の顔、エレナはにこにこ笑顔だけど死ぬほど怖い顔。

 そんな2人に凄まれて、小日向先輩は攻撃している側なのになぜか泣きそうだ。なんかかわいそうになってきた。


「と、取り巻き連中の話はどうでもいいですわ! 慎見さん、あなたはどうなんですの? 不相応な場所にいて、恥ずかしくないんですの?」


 ようやく私に話が回って来たか。


「もちろん不相応なのは自覚しています。本来なら通えていないことも分かっています。でも小日向先輩……私は今ここにいます。そしてこうして私の味方をしてくれる友達に恵まれている。ここから去る気はありません」

「結衣さん……」「結衣ちゃん……」


 もちろん10億円のためだなんて言えないから、とりあえずいい感じの雰囲気にしてみた。本心とかじゃないんだからね!


「くっ……やはりタダで退学してくれるほど甘くはないようですわね」


 小日向先輩は立ち上がり、指をパチンと鳴らした。

 すると青いリボンをつけた少女たちがぞろぞろと教室に入って来た。その数はおそらく15を超えている。


「乱暴な手段に出るのは好きませんが、仕方ありませんわ。皆さん、やっておしまい!」

「嘘でしょ……そんな小悪党ムーブある?」


 びっくりするくらいの敵役ムーブをかましてきた小日向先輩。

 先輩たちの軍勢は私に掴み掛かろうとジリジリと距離を詰めてくる。何されるかはわからないけど、穏便に済むわけはなさそうだ。


「よっと」


 ……ってあっさり殴っている人いるし!


「吹雪さん! 暴力で解決は……」

「向こうからやってきたじゃん。正当防衛だって。それに僕、もう堪忍袋の尾がとっくに切れてんだよねぇ。パパに隠れてこっそり習っていた武術、ここで披露できるよ」


 吹雪さんは次々と先輩たちをぶっ飛ばしてしまう。これはヤバい。私より先に吹雪さんが退学になってしまう。

 3人目に殴りかかろうとした時、窓から入って来た柚子さんが吹雪さんと先輩、双方の腕を掴んで戦闘を止めた。

 ……え? ここ3階だけど、どうやって入って来たんだろう。


 柚子さんが止めたところで教室のドアが開き、先生たちが入って来た。

 もちろんその場で先輩たちは顔と名前を記録されて退去を命じられ、小日向先輩も先生に連れていかれた。


 その後は処分が言い渡され、買収され暴力要員だった先輩たちに3日間の自宅謹慎、吹雪さんと小日向先輩は1週間の自宅謹慎となった。

 ……なんか、いろいろ禍根(かこん)を残してしまった。そんな気がする。

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― 新着の感想 ―
[一言] 3階の窓から飛び込んできた柚子さんが良いとこ全部持っていったこの感じ、好き··· やはり超人メイドさんは良いものですな
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