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018 エレナの屋敷

「小テスト……かぁ」


 今日の授業を終え、私は机に伏した。

 さすがお嬢様学校というべきか、成績のための対策に余念がない。まさか入学して授業が始まってすぐに小テストが始まるだなんて。


「英語だけですし、なにより中学の復習で、さらに来週なので大丈夫ですよ、結衣さん」

「そりゃエレナは大丈夫かもだけどさぁ〜……」


 エレナは中学時代、常に学年3位以内にランクインしていた実力者だ。対して私は全力で勉強していた頃でも50位くらいが最高順位だった。

 今回の小テストにペナルティがあるわけではなさそうだけど、ここで酷い点数を取ると世間の庶民たちに申し訳ない。


「やっぱり庶民なんてこんなものね」だとか、「庶民の脳みそには蟹味噌しか詰まっていないのかしら」とか言われる気がする。

 私が参ったな〜と思っていると、パンっ! とエレナが手を叩いた。


「それでしたら週末、私のお屋敷にてお勉強会を開催するのはいかがでしょう? 結衣さんの点数は私が責任を持って上げさせていただきます!」

「え、えぇ? エレナに悪いよ。エレナも自分の勉強があるでしょ?」

「ふふ、ここだけの話ですが、私は中学時代に僻みを買わないよう、わざと問題を間違えていたりしたんです」

「え? ……じゃあそういうことしなければ常に1位だったってこと?」


 ふふ、と笑ってほぼほぼ肯定の意を表したエレナ。末恐ろしいとはこのことか。

 中学時代、「本郷さん、次は負けないから」とか「やった! 今回は本郷さんに勝った!」と言っていた少女も、結局はエレナの作戦通り手のひらで踊らされていたわけなのだ。

 なんだか人間不信になりそうなんだけど。


「というわけで、私は大丈夫ですのでぜひ我が屋敷においでください。土曜日でよろしいですか?」

「う、うん。じゃあお願いしようかな」


 冷静になって考えてみれば屋敷に行けて、勉強も教えてもらってだと一石二鳥だ。「お嬢さま」のヒントが隠されているかもしれないからね。

 ただなんか天月さんの方や吹雪さんの方から痛い視線を感じるんだけど、これはなんなんだろうか。


 というわけで木・金を過ごし、ついに土曜日になった。

 あれ? エレナの屋敷ってどこだったっけな……と思って部屋を出ると、黒塗りの高級外車がボロアパートの前に停まっていた。

 まさかな? と思って素通りしようとすると、メイド服を着た女性に肩を掴まれ、車内へと誘導された。


「結衣さまですね? これより当邸へとご案内いたします」

「こ、これはご丁寧にどうも……」


 やることの規模が違うわ。

 車で10分ほどだろうか。明らかに私有地という場所に入り、ぐんぐんと進んでいく。

 庭園のようなものの奥に屋敷が構えており、毛が逆立った。

 制服着てきてよかった。ボロいTシャツなんかで来ていい場所じゃなかったな。


 屋敷の玄関? からもメイドさんは付きっきりだ。

 ちょっと質問してみるか。


「あの……私の家に電話されたことあります?」

「さぁ? 私はありませんが」


 くっ……! そういえば何人もメイドがいやがるんだったな。

 案内された部屋に入ると、私服のエレナが高級そうな椅子に座っていた。

 肩が出ている赤色のシャツ。少し露出度が高くて、気合入っているんじゃないかと思うけどお嬢様としては普通なのだろうか。

 私の顔を見てエレナは嬉しそうな表情を浮かべた後、服装を見て少し寂しそうな表情になった。


「私服の結衣さん、見たかったなぁ」


 ……悪かったな、ボロシャツしか持ってなくて。

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― 新着の感想 ―
[一言] >私服の結衣さん、見たかったなぁ そこはほら、着せ替えて遊んでプレゼントできるやんか!
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