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016 巫女さんに自信

 神村さんが再起不能に陥って、とりあえず15分ほどの休憩をいただくことになったようだ。

 おみくじ売り場の裏にある狭い休憩室に私も招かれ、断れる雰囲気ではなかったので入室することにした。


「えっと……このおみくじは何かな?」


 とりあえず疑問に思っていることをぶつけてみた。

 私が購入したおみくじは表紙は自然なれど、中には女の子同士でキスをしているイラストが描かれていた。


「そ、それはダミーおみくじです」

「ダミーおみくじ?」


 あまりに耳慣れしない言葉だったのでつい聞き返してしまった。


「私その……女の子同士の恋愛とか好きで。その中でも過激なものが好きなんです。具体的に言えば『レズえ○ちアンソロジーとか……。でも神社に仕える神聖な巫女として雑念は捨てなければなりません。なのでおみくじの中にまだ優しめのイラストを描いて、勤務中にチラチラ見ていたんです」

「な、なるほど……」


 それ雑念捨てられてなくない? と思ったけど黙っていた。っていうかあのイラストは神村さんが描いたものだったんだ。めっちゃ上手じゃん。


「幻滅されましたよね?」

「え?」

「神社に仕える神聖な巫女がこのような煩悩にまみれているだなんて。今でこそお金持ちと呼ばれますが、宗教法人となり、免税から成り上がった家系ではあります。名家ではないがゆえ、このような煩悩も捨てられないのかもしれません」

「あー……いや意外ではあったけど……」


 どう反応すればいいのかわからない。もし「お嬢さま」関連のものが無ければ絶対に帰っていただろうけど、女の子同士の恋愛が好きなのであれば「お嬢さま」である確率はグッと上がる。だからタダで帰るわけにはいかない。


「神村さんがどう思うかはわからないけどさ、巫女さんにだって煩悩くらいあってもいいと思うよ」

「そ、そうでしょうか。よくいらっしゃるおじさま方は巫女は神聖であれと常におっしゃられるのですが……」

「たぶんそれはその人たちの性癖じゃないかな。神村さんって綺麗な黒髪で和風美人で巫女服似合うから、そういう人を引き寄せちゃうんだと思う」

「そ、そんな褒められると……困ってしまいます」


 巫女服の朱色の部分のように顔を赤くしてしまった巫女さん。


「とにかく、百合好きであることを恥じることはないと思うしダミーおみくじも悪くないと思う。……お客さんに渡しちゃうのはアレだけどね。いつか百合漫画作家になったりするの?」

「い、一応新人賞に応募したりはしています」

「すごい……行動しているんだね」


 なるほどなぁ……もし「お嬢さま」なのだとしたら財力を使って自家出版くらいしそうだけど、それをしないってことは神村さんの家はそこまでのお金持ちではないのかも? いやでも隠し持っている可能性もあるしな〜……。


「私、なんだか自信がでてきました! ダミーおみくじもそうですけど、これからどんどん百合百合としたものを描き続けたいと思います!」

「う、うん。18禁はまだだから注意してね?」


 変なスイッチを押してしまった気がする。

 神村さんは落ち着いたようで一緒に休憩室から出て勤務に戻った。

 はぁ……あんまり決定打になるようなものは掴めなかったか。でも可能性として神村さんの家はエレナたちと比べるとそこまでお金持ちではないかもしれないと分かった。

 もしかしたら大きな一歩……なのかも?

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