015 巫女さんのミス
エレナ、天月さん、海咲さん、吹雪さん。
4人ものクラスメイトとそこそこの関わりをもったのにまだ「お嬢さま」の尻尾すら掴めていない現状に辟易としていた。
こうやって物事が上手くいかないとき、私はどうするか。そう、神頼みである。
神頼みはいい。5円玉を投げるだけで何かを起こしてくれる……ような気分になるからだ。
もちろん敬虔な信徒というわけではない。お正月と盆、そしてうまくいかないときだけ縋っていくザ・現代の日本人って感じの参拝スタイルを貫いている。
さぁどこの神社に行こうと悩んだけど、まぁ10億円目当てに頑張っているわけだし金運の神社でいいかと思い立ち、学校帰りにそのまま寄ることにした。
この町でも結構大きめの神社で、生活苦に陥ったときには何度もお母さんと参拝した。その甲斐あってか、今日まで生きてこられている。
(神様……重ね重ねお願いして申し訳ありませんが、私に惚れたとかいう「お嬢さま」のヒントが掴めますようにお願いします。10億円がかかっているんです)
必死になって願いを捧げる。もちろんファンタジーアニメのように祭壇が光って神様が出てくるなんて展開はない。
無言のまま、振り向いて帰ろうとした。
でもなんか……たった5円で10億を掴もうとするのは気が引けるな。おみくじくらいは買ってくか。
そう思い、おみくじ売り場に足を運ばせると巫女さんが売り子をしていた。可愛いな〜と思いながらガン見しては失礼だと思っておみくじの注文を簡潔に済ませる。
「すみません。おみくじ1つお願いします」
「はい。かしこまりました……あれ?」
「あれ?」と言われては俯いたままではいられない。
私は顔を上げると、その巫女さんの顔に見覚えがあった。というより、巫女さんは巫女さんだった。
何を言っているのかわからないと思うけど、今売り子をしている巫女さんは、出席番号3番の神村巫女さんだったのだ。
「えっと……神村さんだよね? ここの神社の巫女さんやってたんだ」
「う、うん。そう……です……」
そういえば神村さんって人見知りなんだっけ。私もそんなに人付き合いが上手いわけではないから、2人きりになると少し気まずいな。
神村さんの方も見るからに気まずそうだし、なんか手元がおぼつかない。混乱というか、焦りというか、とにかくテンパっているようだ。
「おお、お待たせしました。おみくじです」
「あ、どうもありがとうございます」
よかった、これでこの気まずい空間から逃げられそうだ。
そう思いおみくじを開けてみると、中には運勢がびっしり記されていた……わけではなく、なぜか女の子同士でキスをしているイラストが描かれていた。
「あぁっ!!」
私が困惑していると、おみくじ売り場から悲鳴が聞こえてきた。なんだなんだと思っていると、神村さんが慌てておみくじ売り場から飛び出してきた。
「つつつ、慎見さん! 今のおみくじ……きゃぁ! 開けてる……」
「そりゃ開けるでしょ。でもこれ……何?」
女の子同士のキス画像を神村さんに見せて、疑問をぶつけた。
その瞬間、神村さんは萎びた植物のように膝から崩れ落ちるのでした。