プロローグ
貧乏な家に生まれた。
それだけで、人生はかなりハードモードになる。
友達が遊んでいるゲームを買ってもらうこともできないし、買い食い、プチ旅行、遊園地といった小さな出費すら許されなかった。
それゆえに交友関係も狭まっていき、私は半孤立するようになった。
この世は……カネなんだなぁ。そう卑屈に考えてしまうのも仕方ないのではないだろうか。
なんとか高校には通わせてもらえるようで、とにかく必死に勉強をしている。ウチに私立に行くなんていう選択肢はないからだ。
電話が鳴っていることにも気にせず、勉強を続ける。
お父さんは他界しており、お母さんはこの時間は水商売。私しか電話を取る人はいないが、こんな貧乏な家にかけてくる電話といえば無謀なセールスか滞納している金の請求くらいだろう。
prprprprprprprpr!!!
普段は電話なんて続くことなかったが、今日は何度無視しても1分後にはまた電話が鳴り響いてきた。
なんだなんだと思いながら、ようやく煩わしくなってきた私は電話を取った。
「もしもし、慎見ですが」
『やっと通じましたね。慎見結衣さまでお間違いなかったですか?』
ボイスチェンジャー? ともかく変な声だ。
一刻も早く電話を切りたいけど、ボイスチェンジャーを使った声の主は早速とばかりに用件を述べ始めた。
『わたくし、とあるお金持ちの家のとある屋敷のとあるお嬢さまのとあるメイドでございます。突然のことで申し訳ないのですが、私の主人、要するにお嬢さまが慎見結衣さまに惚れてしまわれたそうなのです。それゆえ学費を全面負担して、あなたをお嬢様も通われる私立金楼学園にご入学させたく思います。また、あなた様にご好意が伝わっているか不安に思っているチキンなお嬢さまはとあるゲームを思いつきました。その名も、『結衣さまのことを好きな人を言い当てられたら10億円ゲーム』でございます。その名の通り、結衣さまがお嬢さまからの好意に気が付き、お嬢さまの名前を当てられたら結衣さまに10億円をプレゼントするというゲームです。ご参加いただくかはご自由にどうぞ』
かなりの長文を一度も噛まずに!?
とまぁそんなことはどうだっていい。私にとって重要なのは2つだ。
金楼学園なら聞いたことはある。というか超有名校だ。財閥のお嬢様、政治家のお嬢様といった、とにかく金持ちしか通えない学校なのだ。
「学費免除って、授業料や入学費だけですか?」
汗がしたるのがわかる。もし他のもの、例えば体操着などは自腹となれば、もちろん金楼学園はブランド物を使っているために家計が吹っ飛んでしまう。
『いいえ。体操着やペン、学食や交通費に至るまで、金楼学園で使用されるものすべてをお嬢さまが負担なされます。結衣さまが負担されるものは一切ございません』
と、ということは……公立高校に通うよりも安く、というより0円で高校卒業資格を得られるということ!
「やります! タダで高校卒業資格を得られてその上10億円も貰える可能性があるんでしょう? 旨みしかない! やります!」
『そうですか。では後日届く書類にサインしてください。入学手続きです。それでは、良い夜を』
最後までボイスチェンジャーを使っていたメイドとやらは電話をそっと切った。
ふふ……なんだか怪しい電話ではあるが、タダより怖いものはないという言葉は私には通用しない。タダなら乗っかれ、それが私の生き方だ。
やってやる……お嬢さま学校の中に入り、私に惚れたとかいう女を言い当てて、10億円もらってやらぁ!
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明日から連載開始です!
7/5追記
新連載「疑似家族プログラムで美少女4人のパパになった」の連載が始まりました!
ぜひそちらも読んでみてください♪