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もう一人のチート

 多田乃は校舎から出て中庭へと向かった。中庭には多数の生徒がいるが、皆多田乃によって時間を止められているため、ピクリとも動かない。まるで静止画のような光景の中を多田乃は先程見た動く何かを追った。



「どこだ…!?どこにいる?」



 多田乃は血眼になって辺りを見回した。しかし動くものの形跡はなく、多田乃に焦りの色が見える。

 気のせいと片付けたいが、ダイブ先にチートバスターの痕跡は絶対に残してはならない。少しでも不安要素は可能な限り排除する。



「バカな…確かに何かが外で動いていた…時も空間さえもこの手で止めている以上、風が吹いたり物が動くことなどあり得ない…」



 多田乃が必死に動くものを探していると、ふとベンチに座る女子生徒の膝に一匹の黒猫が寝ていることに気づいた。多田乃がよく観察すると、猫が寝息を立てていることが分かった。



「まさか…コイツが、チート…?」



 多田乃は鎌を取り出して眠る黒猫に向けた。多田乃はこれまで以上に警戒を見せる。



「…起きろ。お前の正体は分かっているんだ」



 多田乃は黒猫に呼び掛けた。黒猫はゆっくりと起き上がると背伸びをして多田乃を見据えた。バレたかと言わんばかりの表情をしている。



「例え猫だろうが、この世界に蔓延るチートを生かしておく訳にはいかない。予定外ではあるが、お前を始末させてもらう」



 多田乃が鎌を振り上げようとする。すると黒猫はニヤリと笑った。



「オヤオヤ随分と物騒なことをいうね。私が何をしたっていうんだい?確かに脇屋(かのじょ)はやり過ぎたが、私は別に誰も傷つけていないし、貶めようとしてないよ。この世界を壊すつもりもない」



 突然黒猫が多田乃に向かって喋った。多田乃は驚きのあまり思わず後退りする。多田乃に余裕のないことが分かったのか黒猫は話を続ける。



「君はチートバスターだろ?我々の界隈では有名だからね」


「…やはりお前はチートか…?」


「うーん、ちょっと違うな。正確にはイレギュラーといった方が近いだろう」


「イレギュラー、だと?!」


「だって喋る黒猫なんておかしいだろ?」



 黒猫は多田乃に対して自虐的に笑った。多田乃は鎌を向けたまま、攻撃態勢を崩さない。黒猫のペースに飲まれないように気を張っている。



「まあ、落ち着きたまえよ。私は君と敵対するつもりはない」


「だとしても信じられるか!」


「うーん、君はどうやらチートについて誤解しているようだね。私がこれまで知り合ったチートで悪いやつなんてほんの一握りしかいなかったよ。大概は前世の記憶を役立てて今世をより良くして多くの人々を幸せにしたり、世界を救ったりといい奴ばかりだよ。チートだからって全て悪だと決め付けるのは些か短絡的だと思うな」



 多田乃を見る黒猫の目付きが少し鋭くなった。

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