脇屋との対決
多田乃が鎌を振り上げて脇屋に襲い掛かった。刃が当たる寸前に、脇屋は大ジャンプして攻撃を避ける。脇屋はスパイダーマンの如く天井に逆さまに張り付き、多田乃を睨んだ。
「それがあんたの得物か。随分と大掛かりなもんだね。でもスピードじゃ、こっちの方が上さ!」
「一撃かわした程度で余裕をこいているようだな。全く舐められたものだ」
「くたばれ!チートバスター!!」
脇屋が天井から多田乃に向けてナイフを振り下ろしてきた。多田乃は脇屋からの攻撃を鎌の柄で受け止める。すかさず脇屋は着地すると多田乃へ足払いを決めた。足元を掬われた多田乃はバランスを崩して倒れ込む。
「これで終わりだ!」
脇屋が間髪入れずに多田乃へのし掛かり、ナイフを胸に向けて振り下ろした。多田乃は両手で脇屋のナイフを受け止める。多田乃の両手から血が滴り落ちる。脇屋は構わず、多田乃の心臓目掛けてナイフを刺そうと力を入れた。
多田乃はナイフで掌を切られた痛みで顔を歪める。脇屋は勝利を確信して悪魔のような笑みを浮かべた。
「ハハハハハハハハ!!チートバスターとかいって大口叩いていたけど、その程度か!私の邪魔をしたのが運の尽きだな!!」
脇屋のナイフは多田乃の心臓の真上まで迫ってきた。とその時、脇屋の顔が痛みに歪んだ。脇屋が自分の腹部を見ると多田乃が持っていた鎌が深々と後ろから突き刺さっている。
「な、な、何ぃ!!?」
脇屋は口から血を吐いてナイフを手から落とした。多田乃はゆっくりとその場を離れて立ち上がる。
「ど、どうして……?鎌が私に?!」
「残念だったな。やられたように見せ掛けたのは君を油断させる為だ。鎌の遠隔操作なんて訳ないさ」
「ぐっ……!バカにしやがって…!」
脇屋は鎌を引き抜こうとしたが、脇屋の体は刺されたところから徐々に白く硬直し始めていた。脇屋は自分の体の変化に驚愕するが、その間にも硬直化は止まらない。
「な、どういうことだ?!体が動かない!?」
「結晶化が始まったようだな。作戦完了だ。君を始末した」
「そ、そんな…私は脇役のまま終わりたくない…今度こそ主役になるんだ…前世の記憶を思い出して漸く此処まで来たんだ…。嫌だ…!私は……私は……主役に……」
脇屋は完全に全身が白く固まり、石膏のオブジェのようになった。脇屋が動かなくなったのを確認した多田乃は鎌を脇屋から引き抜いた。すると、脇屋の体は粉々に砕け、やがて塵となって消滅した。多田乃はフーッと息を吐く。
「さて、そろそろ元に戻すとするか」
多田乃が右腕のバンドを叩こうとしたとき、何かが窓の外で動いていることに気づいた。多田乃は慌てて窓の方に駆け寄る。
「!?バカな!まだ他にチートがいるというのか!!?」
多田乃は急いで外へと飛び出した。