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アイデンティティ

「クビ…」



依代からの言葉を反芻するような多田乃は呟いた。と同時に一気に体の力が抜ける。多田乃の結晶化は更に進み、半分以上が白くなっていた。



「これで満足か?アラン・スミシー?」


「よ、依代…どうしてそんなことをした?」


「お前の望みを叶えたまでだ。魂は解放したが、奴と一緒に居られるのはあと僅かだぞ。もう体の半分以上侵食されたのであれば、結晶化を止めることは不可能だからな」


「………」



アラン・スミシーが言葉を詰まらせる。対して四天王寺はクレーターからゆっくりと立ち上がると徒手空拳で依代に殴り掛かった。



「いてえじゃねえか!!クソがあああ!」



四天王寺の渾身の拳に対し、依代はあっさりと受け止めた。そして受け止めた四天王寺の拳を握り潰しに掛かる。



「ぐ、ぐぬぬぬぬ…」


「まだ足掻くか?雑魚が。もうお前の出番も終わりだ。大人しく退場しろ!!」



依代は四天王寺の拳を離すと顎を思い切り蹴り上げた。四天王寺は遥か遠くまで吹き飛ばされ、ビルの壁面に衝突した。



「四天王寺君!」



アラン・スミシーがヨロヨロと立ち上がりながら叫ぶ。依代は結晶化の進む多田乃に近づくと、その眼前に迫った。



「結晶化が完了すれば、貴様の人格は完全に消滅する。使い勝手のいい奴だったが、これ以上の脅威になるのであればやむを得まい。せめてもの情けだ。私の手でその「凡人」として人生を終了させてやる」



依代がバンドを叩いてボウガンを取り出す。多田乃は未だ呆然としていた。


僕にとっての存在意義とは何か。多田乃は薄れ行く意識の中でぼんやりと考えていた。


多田乃が一度自殺を図ったのは誰からも認められず鬱々とした日々に耐えられなくなったからである。いわば強い承認欲求を多田乃はずっと当てもなく求め続けていた。


多田乃が異世界転生討伐代行者(チートバスター)を迷わずに引き受けることに決めたのは「神」への信仰心ではない。誰かに認めてもらいたい、そして自分にのみ与えられた使命に対する他者への優越感に浸りたいという極めて自己中心的な理由からだった。


そうした意味ではこれまで屠ってきた異世界転生者(チート)も自分と同じ、生前認められなかった者たちだったかもしれない。一歩間違えれば自分も彼等と同様に排除されていた。いや寧ろ一歩間違っていたようだ。


今度こそ多田乃盆迅(ただのぼんじん)として人格は消滅する。完全なる死を迎えるのだ。自分が屠ってきた異世界転生者(チート)と同じような末路である。因果応報というやつか。



「改めて自分の人生を振り返ると僕は最低の人間だ。どうしようもない屑だと自覚するよ」



多田乃は依代に向けて口を開いた。依代は一瞬驚いたが、気を取り直してボウガンの矢を多田乃の頭に向けた。



「させるか!!」



横からアラン・スミシーが再度依代に斬りかかる。依代は動ずることなく、鎌を受け止めそのままアラン・スミシーを投げ飛ばした。依代は鎌を多田乃の前に突き刺す。



「安心しろ、すぐに後を追わせてやる」



依代が引き金を引こうとした瞬間、多田乃が目の前の鎌を引き抜いて依代を真一文字に斬った。



「!!!!!?貴様!」



依代が慌てて腰を引いたため、切断は免れた。が、多田乃の行動に「神」らしくなく驚愕している。



「多田乃としての人格が消える前に一つだけやっておくことがある。僕の最後の仕事として「使命」を全うさせてもらう!」



多田乃はぎこちないながらも力強く立ち上がった。

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