「神」対「雑魚」
四天王寺から不意打ちを受けた依代の左肩は結晶化が始まっていたが、依代はそれに構うことなく、ボウガンを四天王寺の方へ向けて発射した。多田乃の時と同じように四天王寺の周りをボウガンの矢が囲む。
「雑魚に用はない!」
「いってくれるじゃねえかよ!俺を異世界転生討伐代行者に選んだのは「神」だろうが!飼い犬に手を噛まれるんじゃ世話ねえな!!」
「ほざけ、下郎!!」
矢が一斉に四天王寺に飛んでいくが、四天王寺は避けることなく全ての矢を日本刀で瞬時に叩き落としていく。この光景に依代の表情が歪んだ。先程までの余裕が嘘のように消えている。
「どうした?もう終わりか?」
「ぐっ…どうやら貴様も多田乃と同様に常識の壁を越え始めたか…。さすがに二人も「神」の領域に到達するとは予想外だよ」
「嬉しいねえ…「神」に認めてもらえるなんてよ」
「認めたからといって、いい気になるなよ!」
依代は結晶化した左腕を右手で叩き割ると、左肩から黒い霧で包んで瞬時に再生した。四天王寺も日本刀を構えて依代を睨む。依代はふう、と深呼吸すると少し冷静になったのか、ボウガンを突然消した。
「どういうつもりだ?」
「貴様ごときに不覚を取ったことで少々プライドが傷ついたのでね。雑魚よ、光栄に思うがいい。「神具」を使わず直接私が手を下してやる」
依代の行動を四天王寺が怪訝な様子で伺う。依代は不気味にニヤリと笑った。と同時に瞬間移動し、四天王寺の眼前に現れた。四天王寺が驚愕する前に依代の拳が四天王寺の顔面に埋まった。
凄まじい衝撃に四天王寺は空中へと吹き飛ばされる。慌てて体勢を整えようとするが、突如上空から下にいたはずの依代が降ってきた。迎撃を試みるも右足の蹴りが四天王寺の腹を捉えた。
「ぐはあああああ!!!!」
四天王寺は悲痛な叫びを上げて地面へと落下していく。市庁舎前のビル郡のど真ん中に落ちた四天王寺の周りにクレーターができた。しかし更に追い討ちを掛けるように依代が上空から襲いかかってくる。
「雑魚は雑魚らしく消え失せろ!!」
依代が四天王寺にトドメを刺そうとしたとき、アラン・スミシーが横から依代に斬りかかった。依代は身を翻してアラン・スミシーの鎌を受け止める。
「しぶとい女だ。まだ下克上を狙うか」
「何とでもいえ。「彼」の魂が解放されない限り私はお前をつけ狙う」
「ほう…」
アラン・スミシーの鎌を払い除けると依代はアラン・スミシーの腹に蹴りを入れ、吹き飛ばした。アラン・スミシーは体勢を立て直して何とか着地する。
そして依代は少し思案した様子を見せると、突然指をパチンと鳴らした。
「なんの真似だ?」
アラン・スミシーが首を傾げていると四天王寺の右腕に巻かれたバンドと多田乃の右腕に巻かれたバンドが共に砕け散った。この様子に三人は驚きを隠しきれない。
「異世界転生討伐代行者の役目は終わった。「神具」が消えた今、奴等は解放され、アラン・スミシー…貴様の目的も達成できた。これで戦う意味などなくなった」
「僕らは異世界転生討伐代行者でなくなった…?」
体の結晶化が進む多田乃は弱々しい声で依代に問いかけた。依代はゆっくりと頷く。
「「神」の領域に到達できたのは誉めてやる。だが、「神具」がなくなったことで「神」の武器や時を止める特殊能力はもう使えない。既に「常識の壁」を越えたとはいえ、その身一つでまだ私とやり合うつもりかな?」
「ま、待て…僕はもう…」
「そうだ、用済みだ。早い話が異世界転生討伐代行者はクビだ」
依代が多田乃に向けて吐き捨てるようにいった。




