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転校生

かなり間を空けてしまいましたが、再開します。

 西洋風のお洒落な校舎内は非常に広く、園庭は勿論のこと、クラブハウスや運動場に研究施設、更には寮まで完備されている。

 正に至れり尽くせりな場所であり、良家の子息や令嬢が通うような所謂上流階級御用達の学校のようである。


 多田乃が周りを見渡すと他の学生たちが校舎内を移動しているが見えた。右腕の時計を見ると文字盤が浮かび上がってきた。どうやら始業の時間のようだ。多田乃は緊張しつつ、校舎の中へと歩みを進める。が、此処で困ったことが起きた。



「しまった…まずどこに行けばいいんだ…?」



 多田乃は慌てて胸ポケットに入っている生徒手帳を取り出す。丁寧に中身を見ると、クラスと氏名と顔写真が確認できた。



「園田茂夫…か。この学校でこの成りだと浮きそうなもんだが、大丈夫だろうな…?」



 多田乃は今の自分の姿を確認して、やや不安になった。しかし立ち止まっていたら、逆に怪しまれる。なるべく目立たずに行動しなくてはならない。目立ってしまえば、チートに存在を気付かれる危険がある。多田乃は腹を括って、生徒手帳に書かれたクラスへと向かった。


 3年C組…此処が多田乃、もとい園田のクラスらしい。園田となった多田乃は恐る恐る自分の席を目指す。すると多田乃にとってラッキーなことが判明した。


 何と今日は席替えの日であり、しかも転校生がやってくるとのことだった。普通ではあり得ないことだが、あり得ないからこそチートが存在するのだ。多田乃は内心ニヤリと笑い、さも親しげに周りの生徒に話し掛けた。


 不思議なことに周りの生徒たちは多田乃のことを当然のように受け入れており、多田乃はここぞとばかりに転校生の情報を仕入れる。


 どうやら件の転校生は女子生徒、田舎から上京して特待生としてこの学校へとやって来たとのことである。皆興味を持っているのか多田乃に必要以上の情報まで教えてくれた。

 多田乃は今の姿が周りに浮くことなく、自然に溶け込んでいることに満足し、始業ベルに合わせて自席へと着く。(実際には分からないので他の生徒たちが座るギリギリのタイミングで当たりを付けて座った)



「おはよう、諸君」



 担任とおぼしき中年男性が教室に入ってくる。年齢こそ多田乃よりも上のようだが、品のある良い意味での歳の取り方をしている。多田乃のようにくたびれた感じはまるでしない。女子生徒からも尊敬の眼差しを向けられているようであり、正体がしがない公務員の多田乃は内心嫉妬した。


 しかし、多田乃のターゲットは彼ではない。中年男性の次に入ってきたのは転校生である女子生徒だった。特別美少女でもなく、まだ垢抜けてはいない。あどけなさが残る、何処か守ってあげたくなるような印象である。



伊能継夜(いのままよ)です。どうぞ、よろしくお願いします」



 丁寧に挨拶した転校生が微笑むとクラスの男子からは歓声が上がり、女子からは軽い敵意のような眼差しを向けられているのが分かった。多田乃は彼女こそが異世界転生者(チート)であると睨み、ターゲットを絞ることに決めた。


 担任の中年男性が伊能に割り当てた席は多田乃から少し離れていたが、その日の内に席替えしたことで見事多田乃の前に座ることが決まった。



「ターゲットを確認。これより作戦(ミッション)を遂行します」



 多田乃は右腕の時計に小声で報告を送った。

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