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マンハント

多田乃がダイブした先はまるで戦争か天変地異に巻き込まれたかの如く、荒涼とした光景が広がっていた。多田乃は無我夢中で歩き続け、誰か人気がないか探し回る。しかし、行けども行けども荒れ果てた光景があるだけで生体反応らしきものは何処にもない。多田乃の中に不安と恐怖が増していく。



「そんなバカな…どうなっているんだ?ダイブ先に誰もいないなんて…人類はおろか生命自体が絶滅したというのか…?」



多田乃は歩を止めて膝をガックリと付いた。脂汗が滲み出て、体の震えが止まらない。これからどうすればいいのか。あのメールのメッセージに従ったのが間違いだったのか。多田乃は混乱の余り狂ったように叫び声を上げた。すると…遥か向こうにある瓦礫の影で何かが動いているのが見えた。多田乃は一縷の望みを掛けて立ち上がると、一目散に瓦礫の方へと駆け出した。


近づくと影の正体がボロボロの服に身をまとった中年男性であることに多田乃は気づいた。男性は何か追われているかのように息を切らせ、周囲をキョロキョロと見回している。


多田乃は首を傾げたが、構わず男性に向けて声を掛け、大きく手を振った。と、多田乃に気づいた男性が慌てて手を振り返し、瓦礫の奥の方を指差す。何事かと思いつつ、更に多田乃は歩を進めるが、男性の様子は益々必死になっている。よく見ると手を振っているのではない。シッシとあっちに行けといっているようである。



「一体どうした…?」



多田乃が男性の指差す方向を見ると何やら武装していると思われる一団がバキーに乗って此方に向かっているのが分かった。武装集団はサバイバルゲームのような全身迷彩にアサルトライフルを持った男やモヒカン頭にアメフトの肩パットを身に付け火炎放射器を持ったガタイのいい男、二本の蝋燭をハチマキで頭にくくりつけ、日本刀と散弾銃を持った軍服の男と統一感のない連中だった。


男たちはバキーの上から狂ったように笑いながら戦慄している中年男性に向けて一斉に武器を向けて攻撃を加える。男性は必死に逃げようとするが、両足を銃弾で撃ち抜かれて身動きが取れなくなった。男性は多田乃の方を向いて口パクで「逃げろ」と呟いた。多田乃がこの光景に驚愕していると、男性の体が一気に燃え上がった。モヒカンの男が火炎放射器を発射したのである。


中年男性は悲痛な叫び声を上げて、転げ回った末に事切れたように動かなくなった。この残酷な光景を男たちは見世物を見るかのようにゲラゲラと笑っている。多田乃は顔を引きつらせながら、男たちに見つからないようにゆっくりと後退りする。が、運悪く迷彩の男に気付かれた。



「おい!まだ生きているヤツがいるぞ!」



迷彩の男がアサルトライフルの銃口を多田乃に向けた。多田乃は反射的に後ろを向いて駆け出した。男たちはバキーの運転手に動くように命令すると武器を一斉に多田乃に向ける。多田乃は振り返ることなく、走るが真横を銃弾が掠めた。バキーの走行音が徐々に近づいてくる。息が上がりそうなのも忘れて走り続けたが、ついに多田乃は足がもつれて倒れた。バキーが多田乃の前に回り込み、武装した男たちが降りてきた。



「追いかけっこはもう終わりか?」


「おいおい、簡単に殺すなよ。お陰で狩りの楽しみが減っちまうぜ」


「心配いらねえ。コイツはゆっくりと嬲り殺しにするからよ」



男たちがニヤニヤと笑って多田乃に武器を向けた。まず迷彩の男が多田乃の両足を撃つ。多田乃は苦悶の表情を浮かべて呻いた。軍服の男が近づいて多田乃の右腕を引き上げた。



「おいコイツ、何か変わったもん巻いてるぞ」



軍服の男の言葉に他の男たちも多田乃の元にくる。多田乃は此処で初めて自分の右の手首に先程見た黒のバンドが巻かれていることに気づいた。



「へ、趣味の悪いもん付けてるな」


「どうでもいいだろ、こんなもん」


「確かにそうだな。それよりコイツをどうやっていたぶろうか」



男たちはゲラゲラと笑っている中で多田乃は両腕で這うよう逃げようとした。が、軍服の男が日本刀を多田乃の眼前に突き刺す。進路を塞ぐようにモヒカンの男も多田乃の前に立ち、おもいっきり腹を蹴り上げた。多田乃は激しく咳き込み、腹部を押さえて悶絶する。



(なんてこった…何とかしないと、このままじゃ殺される…自殺よりもきつい最期なんてゴメンだ…)



多田乃が呻いていると突然、頭の中に声が響いた。



『バンドを捻ろ』



多田乃はハッとして辺りを見回した。しかし、武装した男たち以外に誰もいない。誰が一体…。多田乃が疑問に思っているとモヒカンの男が多田乃の頭を踏みつけ、力を加え出した。ミシミシという耳障りな音と激痛が頭を貫く。意識が遠退きそうになったとき、多田乃は藁にもすがる思いで右手首のバンドを捻った。



(クソ、これで何になる!)



多田乃が顔をしかめていると頭を踏みつけている男の動きが止まった。男だけではない。他の男たちや音や砂埃、風。多田乃の周りを取り囲むもの全ての動きが止まっていることに気づいた。多田乃はモヒカンの男の足から脱出すると、その光景に驚愕した。まるでビデオの一時停止を押したかのようだった。



「…!??ど、どういうことだ?」



多田乃が呆然としていると頭の中にまた言葉が響いた。



『奴等を排除せよ。奴等はこの世界に害をなす異世界転生者(チート)。奴等を始末する為に君を此処に送り込んだ』



多田乃は頭を押さえて武装した男たちを見据えた。

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