対峙
ブラックホールの中から一つの影が飛び出し、ビルの屋上へと降り立った。四天王寺とアラン・スミシーは武器を構えて影を睨み付ける。影の正体は濃紺のスーツ姿の短髪の男だった。その表情は極めて固く、口をへの字に曲げている。両目は真っ赤に光輝き、人外の様相を呈していた。
「こいつが…」
「そうだ、彼が我々共通の敵。依代だ」
「奴の方からお出ましとはな」
四天王寺とアラン・スミシーは標的である依代の様子を伺う。すると依代は臨戦態勢の二人に構うことなく、自身の傀儡である脇谷の抜け殻の方に目を向けた。そして傀儡の方に向かうと手に握られていたボウガンを取った。
「隙有り!」
四天王寺が依代の背後から斬りかかった。四天王寺が刀を振り下ろそうとしたとき、依代は振り返ることなくボウガンを四天王寺に向けると躊躇いなく発射した。
「何!?」
ゼロ距離の射撃に動揺した四天王寺の左肩にボウガンの矢が食い込む。更に追い討ちを掛けるように両足の膝にも矢が突き刺さった。態勢を崩した四天王寺は依代の目の前に倒れこんだ。
「ぐっ…バカな」
「四天王寺君!」
アラン・スミシーが援護するように依代に向けて真一文字に鎌を振った。依代は悠々と鎌を飛び越えて避けると、アラン・スミシーの背後に回り込み、アラン・スミシーの背中に向けてボウガンを発射した。
「チッ!!」
アラン・スミシーの背中に三本の矢が突き刺さり、前のめりに倒れた。依代は二人が動けなくなったことを確かめると先の爆発で炎上する市庁舎の方に目を向けた。
「思っていた以上に大したことなかったな。所詮は異世界転生討伐代行者など到底私の相手ではない。それに此処もそろそろ潮時のようだしな」
依代は嘲笑するとボウガンを一旦手から消した。四天王寺とアラン・スミシーは依代からの攻撃の痛みにもがきながら立ち上がろうとする。依代は二人の様子を見て不思議そうに首を傾げた。
「何故戦おうとする?既に決着は付いた。これ以上無益な戦いは何のメリットも獲られない」
「この俺を嘗めるなよ…この世界の「神」から選ばれた異世界転生討伐代行者なんだ。いわばこの世界の守護者でもあるんだ。何処の誰かも知らない奴が勝手にのさばって神を名乗ろう等許される訳がないだろう!」
「四天王寺君のいう通りだ。君は異世界転生者を利用して自分の思う通りの世界に作り替えたいだけだろう?チートの味方面しているが、本心は彼等を見下しているはずだ。チートバスターを狩っていたのも彼等の支持を得るためだけだろう?」
「ククククク…下らん妄想だな。何も知らないのに正義を振りかざしているつもりかね?」
「何が可笑しい?お前の目的は何だ!?」
四天王寺とアラン・スミシーは余裕を見せる依代に不快感を覚えた。すると、四天王寺とアラン・スミシーの体がボウガンの矢が刺さった箇所から徐々に白く結晶化し始めた。
「…!?」
「まずいぞ、四天王寺君。此処は退くしかない」
「だ、だがどうやって…?」
アラン・スミシーは背中の羽根を広げて自身の体を包み、黒猫の姿に戻った。そして四天王寺の体を口で咥えると一気に上空へと飛び上がった。だが…アラン・スミシーの羽根も既に結晶化しており、羽根を動かしたと同時にひび割れて砕け散った。
「う、うわああああ!!!」
バランスを崩したアラン・スミシーと四天王寺は真っ逆さまにビルの屋上から地上へと落下していった。




