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傀儡

アラン・スミシーによって鎌を首に突きつけられた狙撃者はボウガンを下ろしてゆっくりとアラン・スミシーの方を向いた。その表情は何処か諦めのように見える。



「いいだろう、私の役目はもう終わった」


「役目、だと?」



後方の庁舎の爆発に構うことなく、アラン・スミシーは狙撃者に詰め寄った。しかしそれでも多田乃の身に起こったことを案じているためか、いつになく感情的に声を荒げた。



「私は依代様の忠実な僕にすぎない。あの方の意思で私は動いている」


「…やはり依代の手の者か」


「正確には傀儡といえる」


「傀儡…」



アラン・スミシーは先程狙撃者に攻撃を加えたときの違和感を思い出した。そしてその違和感の答えに気づき、迷うことなく鎌を振り上げて狙撃者の両足を切断した。狙撃者は痛みを感じるように苦悶の表情と悲鳴を上げるが、アラン・スミシーの予想通り両足からの出血はなかった。両足の切断面には空洞が見え、中に極細の糸が繋がっていた。



「…なるほど端から君は操り人形だったわけか。私を此処に誘い出したのは多田乃君と分断させる為か?」


「…チートバスターの殲滅は依代様の悲願。誰にも邪魔をさせない」


「何故だ?正直よく理解できないんだ。依代がチートバスターを狩るだけでなく、この世界を破壊しようとすることまではやり過ぎだと思うがね」


「…この世界の絶対的な「神」となる。あの方こそが未来永劫の神に相応しい」


「大した妄想だな。その為にわざわざこんな真似を?」


「あと一歩なのだ。異世界転生者(チート)たちを制して、全ての世界のパワーバランスの頂点に依代様が立つ。その為には「神」の領域に近いチートバスターは邪魔な存在だ。もう奴等の役目は終わりだ」



狙撃者は両手を突いて上半身を起こした。その目は不気味に光輝き、傀儡であることを抜きにしても人外であることが容易に判別できる。アラン・スミシーは狙撃者の顔を覗くようにしゃがんだ。



「君は確か脇谷さんだったな。多田乃君がダイブ先で仕留めた異世界転生者(チート)と同姓同名だが、どうも無関係とは思えない。どうしてこの姿をしているんだ?」


「フフ、依代様はどんなお姿にも成れる。あの男、多田乃盆迅の動きもダイブした段階から察知していた。奴の精神を揺さぶり、武器も使えないこの世界で効率よく仕留める為に私は作られた」


「どんな姿にも…?」



アラン・スミシーの中である考えが過った。まさかだが、自分たちが会っていた市長は…もしや…


ハッとして向かいの市庁舎の焼ける光景に目をやると、眼下に一台の高級車が警備員と消防士らに止められているのが見えた。その車には白髪頭の老紳士がらしくなく苦虫を噛み潰して乗っているように見える。



「貴様…最初から私たちを嵌めたな!」


「残念なのは「神」の使いであるアラン・スミシー、貴様を仕留め損ねたことだ」



狙撃者の脇谷が嘲笑すると同時にアラン・スミシーは脇谷の首を鎌ではねた。無造作に脇谷の頭は屋上の床に転がっていき、その体はバタリと臥した。アラン・スミシーは我に返ると自分が感情に支配されて脇谷にトドメを刺したことに後悔を覚えた。



「しまった…肝心の依代の居場所を聞いていなかった」



手掛かりを失い、途方に暮れていると上空から何かが降ってくることに気づいた。それは金髪のオールバックで刀を手にしたスーツ姿の男…


危機を察したアラン・スミシーが慌ててその場を離れると男は迷うことなく刀を振り下ろしてきた。刀はビルの屋上の床に当たり、衝撃波が周りに広がる。



「チッ、避けたか」



アラン・スミシーを睨み付けて男が呟いた。アラン・スミシーは男の様子をじっと眺めると何かに気づいたのか、手にした鎌を引っ込めた。驚いたのは男の方である。



「何?戦わないのか?」


「その必要はないよ。よく来たね、四天王寺君」



怪訝な表情を浮かべる四天王寺を見てアラン・スミシーがニッコリ微笑んだ。

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