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赦し

「理解が早くて助かるよ」



神野市長が多田乃の肩を叩いて激励した。多田乃は市長に最敬礼をすると、市長室の扉に体を向けて歩みだした。



「どこへいくんだい?」



アラン・スミシーが慌てて多田乃を引き留める。しかし、多田乃の表情からある種の決意が固まっているのが読み取れた。



「どこって、決まっているだろう。依代を葬りにいくんだ」


「だからと言って闇雲に動いても仕方ないだろう。もう少し冷静になりたまえ」


「市長、いや『神』からの勅命なんだ。誰だろうが僕を止める者は許さない」



多田乃の頑固なまでの態度にアラン・スミシーは深く溜め息を付いた。多田乃は意に返さず扉を開けようとする。



「盲信、というか狂信者だな。今の君は」


「何だと!?」



アラン・スミシーの言葉に多田乃が怒りに満ちた表情で振り返った。右腕のバンドを触り、今にも武器である鎌を取り出す勢いである。



「『神』への冒涜か!」


「違うよ、君のことが心配なだけだ。今の君には周りがよく見えていない。下手したら足元を掬われるぞ」


「余計なお世話だ」



多田乃がバンドを叩こうとすると神野市長が多田乃の前に立ちはだかった。市長の前に思わず多田乃は勢いを削がれ、萎縮する。神野市長は多田乃の右腕を掴むと、手首のバンドをいきなり握り潰した。



「「えっ!?」」



多田乃とアラン・スミシーは同時に叫んだ。神野市長は険しい表情で多田乃を睨むと、多田乃の顔面に思いっきり拳を入れた。凄まじい勢いで多田乃は扉の向こうへと吹き飛ばされる。廊下の壁に叩きつけられ、多田乃はガックリと項垂れた。


多田乃の鼻からは血が流れ、背中を強打したことからゴホゴホと咳き込む。ヨロヨロする多田乃の前に神野市長が寄ってきた。



「し、市長…?」



驚く多田乃に構わず神野市長は多田乃の胸倉を掴むと一本背負いの要領で市長室の方向へと放り投げた。数メートル飛ばされた後、多田乃は床に叩きつけられた。アラン・スミシーはその様子を呆然と見ている。



「な、何故…?」


「やれやれ。君にはもう少し教育が必要か」



神野市長が首を回してゴキゴキと鳴らす。多田乃はゆっくりと起き上がり、神野市長に向けて赦しを乞うように土下座した。



「も、申し訳ございません…!」


「謝る相手が違うだろう?」



神野市長は多田乃の胸倉を再び掴んで宙吊りにした。市長の見た目は好好爺であり、多田乃ともある程度の体格差がある。しかし、一連の動きは全くそれらを感じさせない凄味があった。


多田乃は泡を吹きそうになりながら慌ててアラン・スミシーを見た。アラン・スミシーは神野市長を止めようにも体が硬直したように動けずにいる。



「す、すまない。アラン・スミシー…僕が悪かった…許してほしい」



多田乃は声を絞り出すようにアラン・スミシーに向けて呟いた。アラン・スミシーは我に返るとコクコクと頷いた。



「いいだろう」



神野市長が手を離すと多田乃は床に落ちた。絞められた首を押さえながらむせるように咳き込む。神野市長はネクタイを締め直すと再び自分の席に座った。そして好好爺の表情へと戻った。



「信じることは悪ではない。しかし、それを攻撃に向けることは許されない。ましてや味方であるアランに向けるとは言語道断だ。暫しコイツは没収しよう」



神野市長の手には多田乃が右腕に巻いていたバンドがあった。多田乃がガックリしつつ、再び土下座した。



「大変恐れ入ります。此度のこと肝に命じます」



多田乃が顔を上げたとき、アラン・スミシーの「アッ」という叫びが聞こえた。アラン・スミシーの視線の先を追うと、神野市長の心臓から血が流れていることに気付いた。



「市長!!」


「敵襲か…思ったより早かったようだ…」



神野市長が机に臥すとその背中にボウガンの矢が刺さっていた。背後の窓にヒビが入っており、外から狙撃されたようだ。



「チッ、こんなときに!」



再び矢が外から飛んでくる。多田乃とアラン・スミシーは急いで市長室から脱出した。

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