アラン・スミシー再び
多田乃を連れたアラン・スミシーはとある雑居ビルの屋上に着地した。よく見ると夕陽が沈み、辺りが暗くなり始めている。雑踏の音が聞こえ出していることに気づいた。どうやら依代が時を動かしたらしい。
多田乃は屋上の床に足を着くとへたりこんだ。足が震えて力が入らない。確かに依代は多田乃が『神』から与えられたバンドを持っていた。しかし、此処は「何もない世界」のはずだ。本来はオーバーテクノロジーは持ち込めないし、存在し得ない。
それに依代は気になることをいっていた。自分は別の世界からやってきた、と…。考えれば考えるほど、多田乃はこんがらがった。ハッキリ分かっているのは依代が多田乃の命を狙っていることだけだ。
「大丈夫かい?多田乃君」
多田乃の横から羽を畳んだアラン・スミシーが声を掛けた。羽は徐々に小さくなり、やがて見えなくなった。アランは心配そうに多田乃の顔を覗く。
「……大丈夫だ。ちょっと混乱しただけだ…」
多田乃は口ではそういうものの、正直どうしていいか分からなかった。どうにかして落ち着かないといけない。
「やはりヤツが来たか…」
「…依代のことを知っていたのか…!?」
「顔や名前までは知らなかったが、存在だけは把握していた。私が思ってたよりも早く動いてきたようだ」
「……何故僕のことを知っているんだ…」
アラン・スミシーは少し考え込んだ。そして暫しの沈黙の後、多田乃を見据えた。その表情は真剣そのものだ。
「…いいだろう。君には真実を伝えないといけない」
「真実……?」
「この世界のことだ。君は此処が「何もない世界」だと思っているだろう」
「そうだ。『神』の啓示を受けてから僕はこの「何もない世界」の秩序を守るために今まで異世界転生討伐代行者としてやってきたんだ」
「違うな、多田乃君。逆なんだよ、全てね」
「……逆……?」
多田乃はアラン・スミシーの言葉に生唾を飲み込んだ。
「此処はいってしまえば『何でもありの世界』さ。君らチートバスターや私、依代のようなチートバスターハンターにとってはね」
「……どういうことだ…??『何でもあり』…?」
多田乃は理解に苦しむアラン・スミシーの言葉に頭を抱えて倒れ込んだ。アラン・スミシーは多田乃を慰めるように肩を叩いた。
「大丈夫、順を追って説明しよう。私の正体や目的も含めてね」




