前編
予鈴のチャイムが鳴った。
この場に居た全員が“教室”を出る準備をし始める。「次は…2時間目だからD館の12号室かな?」と心の中で確認する。この“学校”は自分たちには広く感じる。ここの教室名を全員覚えている者がいるなら是非会ってみたいくらいだ。そんな愚痴を考えながら次の授業の荷物をまとめていると、教室は静まりかえっていた。「皆んな早過ぎないか…?」と呟く。そうだ、私はいつも皆んなより とろい。物心ついた時からいつもこうだ、集団で行動するとなるといつも置いていかれてしまう、私はきっと協調性のない人間なのだろう。
教室の電気を消して駆け足で教室を出る、突き当たりにある階段を登って渡り廊下を目指す。階段を登る足音が廊下中に響き渡る、この学校はいつも静かだ。2階と3階の真ん中にある綺麗な鏡に自分の焦る姿が映る。「気持ち悪い顔…」私は自分の顔が嫌いだ。皆んなの顔が嫌いだ。この世界が嫌いだ。
階を上がった正面の部屋のドアが空いていた、私はこのドアが空いていたところを初めて見た、咄嗟に教室名を確認する。「化学…室?」聞いたことがない教室名だ。私はどうしようもない好奇心に誘われ、ドアを拳ひとつ分程開け、教室の中を覗く。
そこには見たこともない形状の物体が正面の窓の前に凛々しく並んでいた。指よりも細いのに直立に近い形で伸びていて、瑞々しく、それでいて鮮やかで美しい物体。私は初めて一目惚れというものを体感した。もっと近くで見たいという好奇心に負け、その部屋に入り一歩近づいてみる。すると、その物体に光が通って、うっすらと透けているのを見てその物体の薄さがどれ程の物かが分かった。呆気に取られて声を漏らす。
「これ程の芸術品、一体誰が作ったんだ…」
その時、本鈴のチャイムが鳴りはじめた。咄嗟に我に帰り、その部屋を出ようとドアに手を掛けた時、隣で女性の声がチャイムの音に混じって微かに聞こえた。
「また来ると良いよ」
私がさらに気が動転し、走ってその場から逃げるように走った。
やばい、“先生”に怒られる!頭はそのことで一杯になった。渡り廊下を駆け抜け、左に曲がった、D館の12号室はここから三つ目の教室だ。勿論、通り過ぎる教室では既に授業が始まってるに違いない。授業に遅れて走ってる姿を見られるだなんて、たとえ知らない他クラスの人だとしても恥ずかしい。私は誰にも見られないよう精一杯姿勢を低くして2つの教室を通り過ぎた。
目的の教室にたどり着くと怖くて足がすくんだ。1分以上遅刻している、怒られるのは確定だ。ここの教室では自分以外の人は既に授業を開始している、そんな中教室に入るなんて気不味いに決まっている。だが、時間が過ぎれば過ぎるほど焦りが大きくなるのを感じた。「もうどうにでもなれ!」やけくそになって教室のドアを開けた。
これが処女作となります。
漫画を描こうと思っております。