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第33章 真実の行方

 アンリはイタリアのテイラーでスーツを仕立てた。身体にぴったりに採寸してもらい、服装を見直した。学会の発表の場へ普段着で行けば、まず入り口の警備員が通してくれないだろう。


 偽造したイタリア市民を証明する文書を持ち、ガンショップへ行った。一通りの品を確認してから、小ぶりのリボルバーを購入した。場所は講堂内だ。遠くからの狙撃ではなく、近づいてから確実に仕留められる方が良いと判断した。


 早めにヴェネツィア国際大学へ到着しておいて良かった。まさかの教皇の来訪で、入り口の警備が強化され、荷物検査が行われ始めたからだ。そのときにはすでに、アンリはカメラを肩に提げ、プレスの名札を肩に通していた。


 講堂は満員になった。ローマ教皇が学会の発表へ参列されることは、異例中の異例で、地元テレビ局も駆けつけた。いったいどのような発表がなされるのか、注目を集めていた。


 まさに、ここで、あの品を聴衆の見世物にするとは、言語道断だ。


 なぜ神の創り給うた、聖なるものを、彼女の手に委ねるたのか。教皇はどういうお考えなのだろうか。だが、教皇とはいえ、彼自身は神ではない。アンリも含め、すべて神の御許では同じ、神の子なのだ。過ちを犯すことだってある。


 大河内有理は、当の証拠品が会場へ届いていないことにやきもきしていた様子だったが、発表の直前に、見知らぬ男から、クーラーボックスを受け取り、一息ついていた。


 やはり、ギリギリに届いたか。京の言う通りで、これでは奪う機会もない。やはりいま、彼女もろともに、発表する直前に闇へ葬るしかないだろう。


「東京自治大学の大河内有理です」


 そう自己紹介し、発表が始まろうとしていた。スクリーンには、彼女が作ったと思われるスライドが表示された。いままさにクーラーボックスが開けられようとしていた。


 アンリは座っていた後列の席から静かに立ち上がると、真ん中の通路をゆっくりと歩いていった。懐からリボルバーを出し、撃鉄を起こし、彼女の前にあるクーラーボックスに狙いを定めた。もちろんダブルアクションで、二発目は、彼女の胸に弾を撃ち込むつもりだった。


 彼女はようやくそこでアンリを認め、悲鳴を上げた。もう遅い。


 だが————そこで予想だにしないことが起きた。


 目の前にローマ教皇が立ちはだかった。その表情は毅然としていた。アンリは動揺した。


 教皇の警備についていた人たちも、彼に覆い被さるように重なった。


 もはや教皇であろうとも関係ない。邪魔する者はすべて同罪だ————


 アンリは、前を塞ぐ者たち全員へ、弾丸を撃ち込む覚悟をした。


 そして、最初の引き金を引こうとした。

「第34章 殉教者」へ続きます。

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